助成金と補助金の違いを知っているでしょうか?助成金と補助金はどちらも返還義務のない国からの支援金ですが、その目的や制度は全く異なっています。
条件はもとより、資金提供の交付元も違うので、申請書類なども全く違います。
しかし、助成金や補助金は政府のお墨付きという「資金をもらえる制度」なので、積極的に利用したいものです。
まずは助成金と補助金の違いを理解して、状況に応じて使い分けられるようにしておきましょう。
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助成金とは雇用環境の改善に努めた企業に対して支払われる報奨金のことです。
「雇用」というのが、助成金の特徴を理解するためのポイントになります。
助成金は、企業が支払っている雇用保険の一部が財源になっているので、資格要件を満たしていれば、どういった企業でも高確率で支給されるのが特徴です。
残業時間の短縮・従業員の教育・パートの正社員化・育児休業の活用・有給休暇の増加など、これらの雇用環境をよくする行動は、それぞれ企業にとって費用になるため、営利目的から言えばマイナスになりますので、長期的な運用が必要になります。
例えば、従業員の教育を重視すると、その間の生産活動はストップしてしまい、価値の最大化が実現できません。パートを正社員化するのも人件費の増加を招き、経費を圧迫するでしょう。
しかし、長期的な視点から考えれば、雇用環境の改善は社員の能力を向上させ、満足度や定着率を高めることになり、企業の社会的価値を増大させるため、全体としての価値は上昇しています。
このように短期的な利益を追わずに、長期的な目線で雇用環境を改善した企業に支払われるのが助成金です。
補助金とは、国(経済産業省系)や民間企業が、新規事業に対して実施している寄付金です。
補助金は、助成金と同じく返済する必要のないお金ですが、経費の適用範囲が広く助成金よりも高額であることが特徴です。
補助金は助成金とは違い、企業の事業としての成長をサポートする側面が強く自社負担が必ず発生することになります。
例えば、5,000万円を受給するために、1億円の設備投資が必要になるといったものです。
このように補助金は事業を開始する前に経費の一部をサポートすることで、企業の成長を後押しするという性格が強くなっています。
また、補助金は要件を満たしたからといって、必ずしも誰でも資金を得られるわけではありません。
補助金は助成金よりも高額な資金援助をうけることができますが、条件が厳格に定められており書類選考で落とされることも多くなるという違いがあります。
<助成金と補助金の違い>
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助成金 | 補助金 |
交付元 | 国(厚生労働省)、地方自治体 | 国(経済産業省)、地方自治体、その他民間企業 |
費用 | 数十万~数百万 | 数百万~数十億 |
支払時期 | 後払い | 後払い |
返還義務 | なし | なし |
目的 | 雇用環境の改善 | 経済の活性化 |
条件 | 資格要件を満たす | 社会的需要を満たす |
案件数 | 少ない | 1万種類以上 |
会計検査院の検査の有無 | なし | あり |
専門家 | 社会保険労務士、行政書士など | 中世企業診断士、コンサルティング会社 |
申請期間 | 随時~長期間 |
年に数回で、数週間~数か月 |
助成金は雇用の維持や促進に貢献した企業に、厚生労働省から支給されており、ハローワークなどが公募しています。
一方、補助金は経済産業省や民間企業が公募しており、豊富な種類があるのが特徴です。
助成金が「雇用」という観点から実施されており、厚生労働省に限定されているのに対して、幅広い種類があるのが補助金の特徴であり、違いとなります。
なお、補助金の実施主体には以下のようなものがあります。
■国・省庁関連
■自治体関連
CHIVAS REGAL
各地域中小企業支援センター(振興公社、振興機構、振興センターなど)
公益財団法人 三菱UFJ技術育成財団
助成金は社員の雇用環境を改善するのが目的ですが、補助金は経済成長や事業の拡大を目的にしています。
「社員の待遇を改善すること」と「経済価値を最大化する」という目的の違いから分かるように、補助金と助成金の存在意義は大きく異なります。
助成金は雇用維持・人材育成・新規雇用など、労働環境を整える条件を達成できれば高確率で受給することができます。
各種助成金で定められた基本的な労働基準に適合していれば、「実施計画の申請⇒計画の実行⇒支給申請」という簡単な手続きで助成金を受け取ることが可能です。
一方、補助金申請の場合はスケージュールなどを厳格に記した事業計画書の作成からはじまります。
事業の特徴や競合事業との差別化事項・必要経費や収支計画など、補助金を出資する側が納得するようなものを提出しなければなりません。
そして、補助金には審査があり、同じく補助金を申請した事業主のなかから、一部の事業者のみが採択されます。
基本的に全ての応募者が採択されるということはなく、平均して3~4割程度が採択されれば良いと言えるでしょう。
助成金は労働環境の改善に努めた企業に対する報奨金という意味合いが強いので、100万円程度と低い金額になっています。
それに対し、補助金は経済成長をサポートするための「投資」という側面が強く、まとまった金額を支援してもらえるのが補助金の特徴です。
規模は応募される補助金によって大きくことなりますが、中小企業・小規模事業者向けの補助金であっても数百万~1,000万円規模になるものもあります。
例えば、近年、中小企業・小規模事業者に人気の補助金に「ものづくり補助金」があげられます。
こちらは、年に1~2回募集がありますが、補助金は最大1,000万円、補助率3分の2(最大)という条件となっています。
<ものづくり補助金の完全ガイド>
補助金も助成金も後払いなのは変わりませんが、期間の利益においても違いがあります。
例えば、補助金は国や地方公共団体の財源がなくなったり、補助する必要がなくなった場合は打ち切られます。
さらに、補助金には募集時期が決められており、決められた時期しか応募ができません。
しかし、助成金は異なります。
助成金は雇用環境の改善に対して支払われる奨励金なので、助成事業が見直されない限り長期的に実施されており、時期に関係なく申込が可能です。
補助金申請が成功したら5年以内に会計検査院の監査が入ることがあります。
これは補助金が適切に利用されていることを確認するためのもので、監査の対象となるのは、補助された企業の中からランダムに選ばれます。
補助金は助成金と違い、数百万円以上という大きな金額が支給されます。
そのため、本来の助成金の使用目的にあてはまらないものに使用されるという事態を避けるため、確認することが重要になります。
一方、助成金は報奨金という意味が強く、さらに支給される金額も低いため、こういった監査の制度は設けられていません。
補助金は年に数回だけ数週間から数か月の申請期間が設けられています。
まだ事業化していないサービスが対象ですので、製品開発などをする前に申請する必要があり、提出書類の作成はしっかりと行う必要があります。
これに対し助成金は条件を満たしさえすれば随時申請することができ、長期的な受給も可能です。
実際に実施されている主な補助金としては、以下のようなものがあります。
創業補助金
創業時の事業資金に対して補助金を活用することが可能です。
一般的に、創業時の資金調達としては、自己資本として準備しておくものや、日本政策金融公庫などから融資をうけることが多いですが、創業資金は事業も軌道に乗る前であり、返済負担が大きいと資金繰りが厳しくなってしまいます。
一方、新規事業に対して、返還義務のない補助金を利用することができれば、創業者にとっては、大きな手助けとなるでしょう。
<創業補助金ガイド>
ものづくり補助金
「ものづくり補助金」とは商業・サービス・ものづくりの分野において、社会に革新的な挑戦をする小規模事業者や中小企業をサポートする補助金です。
設備投資などを国が支援することで、積極性のある企業がスムーズに事業を行えるようになります。
<ものづくり補助金ガイド>
持続化補助金
小規模事業者が、商工会議所などの指導を受けながら、経営改善に取り組む場合の資金支援が得られる補助金です。
<持続化補助金ガイド>
一方、助成金には以下のようなものが用意されています。特に、助成金として有名なものを記載いたします。
雇用調整助成金
景気の悪化・産業構造の変化などの経済的理由により、事業規模を縮小しなくてはならなくなった事業者が、従業員の雇用調整を行ったときに支給される助成金です。
職業訓練への出向や、休業手当負担額に対する助成が行われます。
キャリアアップ助成金
非正規労働者を正社員化するなどの、キャリアアップ計画を執行する企業に支払われる助成金です。
有機契約労働者などを正社員化した場合はもちろん、新規で正社員として採用した場合も対象になります。
<キャリアアップ助成金ガイド>
キャリアアップ形成促進助成金
従業員のキャリアアップを計画的に実施する企業に対して支払われる助成金です。
職業訓練費や従業員の一部賃金を国が支援することで、教育投資にかかる企業の負担を減らし高度人材の育成をサポートします。
補助金と助成金の違いについて紹介しました。
助成金は社員のキャリアアップなどの労働環境の改善に対して支払われる報奨金です。
これに対し、補助金は新規事業や、経営改善に挑戦する事業者に資金を提供することで経済成長をサポートする寄付金です。
どちらも返還義務のない資金になりますが、目的が全く異なります。
助成金の金額は100万円規模にとどまりますが、条件さえ満たせば長期的に受けとれるメリットがあります。
これに対し、補助金は事業計画書などの厳格な作成が求められますが数千万円規模の資金提供を受けることもできるので、状況に応じて使い分けることが大切です。
助成金と補助金は目的が全く異なる支援金ですが、財源は法人税や雇用保険税などが利用されているので、労働法に違反するような事業形態だと申請が通ることはありません。
どちらの制度を利用するにも健全な企業経営は必要不可欠です。
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