令和4年(2022年)の事業再構築補助金には通常枠以外にも4つの申請枠が設けられました。
その中の1つが最低賃金枠です。
一定の要件を満たす事業者であれば、最低賃金枠を活用した方が通常枠よりも有利に事業再構築補助金を活用できます。
今回は最低賃金枠の特徴や申請方法の詳細だけでなく、通常枠と最低賃金枠のどちらで申請すべき等を検討します。
⇒ アステップ・コンサルティングの事業再構築補助金申請サポートサービスはこちら
Contents
最低賃金枠は令和4年の事業再構築補助金の公募から設けられた新枠です。
一定の要件を満たす事業者のみが選択できる申請枠であり、通常枠よりも有利な条件で申請できる可能性があります。
また、採択・不採択などの審査でも有利になる可能性があります。
ここでは最低賃金枠について知っておくべき基本的な概要や、申請方法などを説明します。
一般的に事業再構築補助金に申請する場合は通常枠を選択します。
一方、一定の要件を満たしていれば最低賃金枠にも申請できるようになります。
通常枠と最低賃金枠の違いについて整理してみましょう。
|
通常枠 |
最低賃金枠 |
補助額 |
従業員数20人以下100万円~2,000万円 従業員数21~50人100万円~4,000万円 従業員数51~100人100万円~6,000万円 従業員数101人100万円~8,000万円 |
従業員数5人以下100万円~500万円 従業員数6~20人100万円~1,000万円 従業員数21人以上100万円~1,500万円 |
補助率 |
中小企業者等2/3(6,000万円を超える部分は1/2) 中堅企業等1/2(4,000万円を超える部分は1/3) |
中小企業者等3/4 中堅企業等2/3 |
従業員数20人以下の事業者の場合、通常枠では最大2,000万円までの事業再構築補助金に申請できますが、最低賃金枠は最大でも1,000万円までしか申請できません。
そのため、受け取れる補助金の金額の大きさから考えれば、通常枠で申請した方がお得になります。
一方、補助率は通常枠が2分の1(中小企業者は3分の2)であるのに対し、最低賃金枠は3分の2(中小企業者等は4分の3)と有利になっています。
必要な投資金額によっては、通常枠を用いるよりも自己資金が少なく投資できる可能性があります。
事業再構築補助金の最低賃金枠は、補助率が高い(=自己資金が少なくて済む)というメリットがありますが、この最低賃金枠で申請するためには満たすべき要件があります。
それは、通常枠の申請要件(以下の5項目)を満たすことに加え、最低賃金枠としての要件を充足する必要があります。
上記の5項目に加え、最低賃金枠に申請するための要件として以下を充足する必要があります。
▼事業再構築指針の説明ページ(外部リンク)
▼事業再構築指針の解説
>>認定経営革新等支援機関とは?選び方・相談の仕方・適する支援機関のまとめ
最低賃金枠の申請要件
① 以下の2つのうちいずれかを満たすこと(最賃売上高等減少要件)
(ア)2020年4月以降のいずれかの月の売上高が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していること
(イ)(ア)を満たさない場合には、2020年4月以降のいずれかの月の付加価値額が対前年又は前々年の同月比で45%以上減少していること
② 2020年10月から2021年6月までの間で、3ヶ月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること(最低賃金要件)
簡単に言えば、通常枠よりも売上高減少要件の減少幅が大きく、加えて、最低賃金要件を満たしていることが条件となっています。
なお、最低賃金+30円以内であって、+30円以上ではありません。
一定の最低賃金以上であれば良いというわけではなく、最低賃金から+30円以内の給料水準である従業員が一定割合以上であることを求めているのです。
間違えやすい要件ですので注意しましょう。
最低賃金枠の要件充足で用いる従業員数は、2020年10月~2021年6月までの間の対象月とする3ヶ月それぞれの申請時点の常勤従業員数を基準とします。
また、常勤従業員は中小企業基本法上の「常時使用する従業員」をいい、労働基準法に基づく「予め解雇の予告を必要とする者」とされています。
この従業員数には、日々雇い入れられる者、2ヶ月以内の期間を定めて使用される者、季節的業務に4ヶ月以内の期間を定めて使用される者、試みの使用期間中の者は含まれません。
一方、上記にあたらなければ、パート・アルバイトといった方も従業員に含まれます。
なお、最低賃金枠に申請するにあたって、従業員数、および最低賃金+30円以内である従業員が全体の10%以上であることを確認するための資料として、賃金台帳を提出する必要があります。
なお、事業再構築補助金の最低賃金枠は令和4年の公募から設けられた特別枠であり、令和3年には設けられていなかった申請枠です。
事業再構築補助金は令和3年から実施が始まっていますが、当初は売上高の減少幅が大きい事業者のみを優遇する特別枠(緊急事態宣言枠)が設けられていました。
しかし、令和4年から特別枠が大幅に見直され、最低賃金枠を始め、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、グリーン枠の4つの特別枠が設けられています。
それでは、最低賃金枠の要件を満たしている事業者は、通常枠と最低賃金枠のどちらで申請・採択されることがお得(有利)となるのでしょうか。
一概には言えませんが、これは補助額、補助率のそれぞれで考える必要があります。
通常枠の補助額は最大で8,000万円ですが、最低賃金枠の補助額は1,500万円が上限です。(従業員数20人以下の中小企業者で考えた場合、通常枠の最大額は2,000万円で、最低賃金枠は1,000万円が上限)
そのため、補助額の大きさだけで考えれば、通常枠の方が有利ということになります。
しかし、そこまでの規模の補助金が必要ではないという事業者も存在するでしょう。
仮に、必要な設備投資額が1,000万円という事業者の場合、通常枠の上限額が大きいことは特にメリットとはなりません。
この時重要になるのが補助率です。
通常枠の補助率は、中小企業者で3分の2ですが、最低賃金枠では4分の3となります。
つまり、通常枠では補助金は666万円(≒1,000万円×3分の2)になりますが、最低賃金枠では750万円(≒1,000万円×4分の3)を受け取れることになります。
そのため、最大投資額が一定水準以下の場合、補助率が重要な点となって最低賃金枠を活用した方が有利になります。
通常枠と最低賃金枠のどちらで申請するかは、必要な設備投資の総額と、補助率のそれぞれの観点から考える必要があるのです。
ここまでのご説明で明らかですが、最低賃金枠が適する事業者は、従業員数20人以下の場合で投資額が1,333万円以内であること、従業員数が21人以上の場合で投資額が2,000万円以下であることがあげられます。
この範囲内であれば、最低賃金枠で申請した方が、受け取れる補助金額も大きくなるので有利になります。
一方、もっと大きな設備投資など、投資額が大きい事業者は通常枠で申請した方が受け取れる補助金額も大きくなる可能性があります。
最低賃金枠のような特別枠が設けられている場合、通常枠と最低賃金枠のどちらで申請した方が採択されやすいのかといった質問も良く見られます。
結論を言えば、特別枠を活用した方が審査に有利になると言えるでしょう。
最低賃金枠のような特別枠は審査上の加点対象となるケースがありますので、採択されやすくなります。
さらに、最低賃金枠として不採択となった場合でも、再度通常枠の審査にかけられます。
そのため、最低賃金枠・通常枠の2回審査・採択のチャンスがあることになり、最低賃金枠で申請した方が通りやすいということになります。
今回は事業再構築補助金のうち、令和4年から設けられた最低賃金枠について説明しました。
最低賃金枠は上限こそ低いですが、補助率の高さや、審査の通りやすさがメリットになります。
投資額などの必要金額が上限の範囲に収まっているのであれば、最低賃金枠を活用した方が良いでしょう。
なお、事業再構築補助金は2022年6月現在、第6回公募が募集されています(申請期限6月30日)。
第6回公募の後も、3ヶ月ごとに公募が行われる予定ですので、今回の申請に間に合わない方でも次回で申請することが可能です。
関連記事
03-5859-5878受付10:00~18:00