創業・開業を思い立っても心配なものは資金ではないでしょうか。開業資金や事業がうまく回転できる時期になるまでは、資金調達や資金繰りに悩む創業者は多いものです。
創業者の資金調達の手段としては、自己資金、日本政策金融公庫の創業融資、自治体による制度融資が主なものとなっています。
しかし、是非活用していただきたいおすすめの方法でありながら、意外に活用されていないのが補助金。国や自治体が公募する色々な補助金も有効な資金調達手段となっています。
補助金をいかに上手に活用できるかが、創業の経営にとって大きなポイントになってきます。
今回は、創業にあたって活用できる補助金の公募要件や留意点などをご紹介します。
Contents
創業・開業時に活用できる補助金として、最初にご紹介したいのが「地域創造的起業補助金」になります。地域創造的起業補助金は創業時の補助金の代表格とも言えるものです。
概要
地域創造的起業補助金は創業者向けの補助金として、全国規模で公募され、採択数も多く魅力ある補助金です。現在では、平成26年の産業競争力強化法改正により、創業者支援の仕組みが大きく変わったこともあり、都道府県単位で公募する補助金となっています。
平成30年度の地域創造的起業補助金一次公募では、応募件数358件に対し、採択総数は120件であり、採択率は34%となっています。応募者3人のうち、1人が採択される計算です。
採択率は補助金のなかでも平均的な水準であり、創業者・開業者の方には、是非挑戦していただきたい補助金と言えます。
補助要件(2018年度基準)
補助対象経費
地域創造的起業補助金の対象となる経費は以下となっています。
・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
・交付決定日以降、補助事業期間内の契約・発注により発生した経費
・証拠書類等によって金額・支払等が確認できる経費
補助上限額/下限額
・外部資金調達がない場合 50万円以上100万円以内
・外部資金調達がある場合 50万円以上200万円以内
外部資金としては銀行などの金融機関からの借入が対象となります。外部資金の調達見込みがあることを確認する書類を金融機関から取得することで、補助上限額が100万円から200万円に増加します。
補助率
2分の1以内
補助率は2分の1以内ですので、創業資金として100万円を使用するとすれば、補助金から最大で50万円が得られることになります。また、補助金の下限が50万円になりますので、すくなくとも100万円以上の創業資金がないと、地域創造的起業補助金には申請できないことになります。
自治体毎で、創業応援助成金など名称は様々ですが、創業期の費用の補助金を支援しています。要件や補助条件も異なりますので、創業予定地での補助金を含む支援メニューの確認をお勧めします。
特に、「市町村等が実施している特定創業支援事業(創業セミナー等)に参加し、修了証明書の発行を受けた方」を要件している自治体が多いですので、特定創業支援事業の内容を確認する必要があります。
以下に、東京都の場合を例として、創業助成事業を紹介いたします。
概要
東京都の創業助成事業では、上限額は300万円と国の補助金と比べて大きなものとなっているのが魅力です。補助金申請の要件は色々とありますが、制度の趣旨からしても、「産業競争力強化法に規定する認定特定創業支援事業により支援を受け、過去3か年の期間内に都内区市町村長の証明を受けた方」が一番現実的なものとなっています。
東京都の創業助成事業の特徴として、他の補助金も同じですが、面接審査が厳しいことがあげられます。例え、専門家の支援を受け、見栄えの良い申請書を作成していても面接審査で落ちる事例は多いことに留意が必要です。
平成30年度一次公募では、72件の採択となっていますが、採択率は公表されていません。
補助要件(2018年度基準)
都内での創業を具体的に計画している個人、又は、創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす方が対象となります。
助成対象期間
交付決定日から1年以上最長2年
助成対象経費
東京都の創業助成金が対象とする経費は以下となります。
①従業員人件費、②賃借料、③専門家謝金、④産業財産権出願・導入費、⑤広告費、⑥備品費
助成限度額
300万円(下限100万円)
助成率
助成率 3分の2以内
先ほどの地域創造的起業補助金の補助率が2分の1以内であったことに比べ、東京都の創業助成金の補助率は3分の2以内と高めであることが特徴です。
次に、創業・開業時に役立つ補助金として、小規模事業者持続化補助金があげられます。小規模事業者持続化補助金は創業・開業者はもちろん、事業継続中の方も利用できる補助金として知名度の高いものです。
補助金の概要
小規模事業者持続化補助金では、HP作成や販促用チラシの作成など主として、販路開拓に必要な経費を対象とした補助金で非常に人気があります。
小規模事業者が商工会議所などの支援を受けて事業計画の策定などに取り組むことが特徴となっています。
50億円規模の予算であるため、採択者は約1万社ですが、採択率は30%~40%となっています。申請が採択されるためには、質・量ともにハードルが年々高くなっているといわれています。
今年も数回ありましたが、大規模な自然災害などによる特定被災地への補助金として活用されるケースも多くなっています。
補助要件
小規模事業者[商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(平成5年法律第51号)第2条を準用]が策定した「経営計画」に基づき、商工会議所の支援を受けながら実施する地道な販路開拓等のための取組であること。
あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。
補助対象経費
小規模事業者持続化補助金の対象となる経費は広範囲です。具体的には以下のような経費が対象となります。
①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥資料購入費、
⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪車両購入費(買物弱者対策事業の場合に限ります)、⑫設備処分費(補助対象経費総額の1/2が上限)、⑬委託費、⑭外注費
補助上限額
50万円
ただし、①従業員の賃金を引き上げる取組、②買物弱者対策に取り組む事業、③海外展開に取り組む事業は100万円
補助率
補助対象経費の3分の2以内
小規模企業持続化補助金の補助額上限は50万円とやや低めです。しかし、しっかりと準備・対応すれば、比較的採択される可能性が高く、得られる可能性の高い補助金であることが特徴です。
補助金の概要
IT導入補助金は平成29年度から開始されました。平成33年までの今後5年間の公募が予定されている補助金です。他の補助金申請と比べて、①IT導入支援事業者の代理申請、②書式ではなくWEB申請の二つが大きな特徴となっています。
IT導入補助金では、事前に決められたIT導入支援事業者が提供するITツールでないと補助金が出ないことに注意する必要があります。そのため、IT設備であれば良い訳ではなく、対象となる事業者から購入することが条件です。
平成30年度は、500億円という高額の予算措置がされていることもあって、書類上の形式的なミスが無ければほぼ100%採択される状況となっています。
平成30年度は大幅に予算が余る状況となっていますので、来年以降の予算規模や精度設計が注目されます。
要件(2018年度基準)
・生産性の向上に資するITツールを導入する中小企業・小規模事業者等であること
・申請者(中小企業・小規模事業者等)の労働生産性について、補助事業を実施することによって3年後の伸び率1%以上、4年後の伸び率1.5%以上、5年後の伸び率2%以上又はこれらと同等以上の生産性向上を目標とした計画を作成すること。
補助対象経費
IT導入支援事業者が登録するHP作成費用やクラウドサービスなどITツール導入に伴って発生する費用
補助上限額/下限額
50万円~15万円
補助率
補助対象経費の2分の1以内
補助金の概要
事業承継補助金が創業に関係する?と感じられる方もいらっしゃる方もあるかと思います。創業の一形態として、すでに開業済みの会社の経営権などを引き受けることもあります。そうした場合に活用できる補助金です。経営者交代型とM&A型の2タイプがあります。本稿では、創業者との関連性が高い経営者交代型をご紹介します。
後継者不足が日本全体の大きな課題となっていますので、政府としても来年度以降かなり力を入れてくると思われる補助金です。要件が厳しいことに加え、まだ補助金自体の認知度が低いため、平成30年度はかなり高い採択率となっています。
一次公募から三次公募までの累計応募件数が829件、採択件数は653件であり、採択率は80%ちかくとなっています。
補助要件
事業承継補助金の要件として、以下2つを満たす必要があります。
①事業承継において、以下の形態であること
・ 法人における退任、就任を伴う代表者交代による事業承継
・ 個人事業における廃業、開業を伴う事業譲渡による承継
・法人から事業譲渡を受け個人事業を開業する承継
②以下に例示する経営革新等を伴うものであること
・新商品の開発又は生産
・新役務の開発又は提供
・商品の新たな生産又は販売の方式の導入
・役務の新たな提供の方式の導入
・その他の新たな事業活動で販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組
補助対象経費
人件費/設備費/原材料費/外注費/委託費/広報費/知的財産権等関連経費/謝金/旅費/店舗等借入費/会場借料費/マーケティング調査費/申請書類作成費用
<事業所の廃止、既存事業の廃業・集約を伴う場合>
廃業登記費/在庫処分費/解体費・処分費/原状回復費
補助上限額/下限額
小規模事業者等:200万円/事業所の廃止等を伴う場合の上乗:300万円
小規模事業者等以外:150万円/事業所の廃止等を伴う場合の上乗:225万円
補助率
小規模事業者等:2/3以内
小規模事業者等以外:1/2以内
補助金申請は創業者にとって有力な資金調達手段です。創業時に作成した創業計画に事業の進捗状況を織り込んで新たな事業計画を策定する良い機会となります。
どういう補助金があるかアンテナを高くして情報収集する必要があります。
検索ページで「○○市 創業支援」と検索すると、補助金だけでなく、認定特定創業支援事業などの創業支援や創業融資などの情報を収集できます。
創業に関しては、各自治体とも特に力をいれている分野ですので、積極的な取り組みをご検討ください。
小規模事業者や、自営業者の間で補助金に対する人気は高まる傾向にあります。
そのため、採択率(補助金の応募者のうち、採択された方の割合)は低下したり、申請に関する争いは激しくなっています。
補助金の採択確率を少しでも高めるためには、補助金申請に慣れた専門家を活用するのがポイントです。近年、補助金人気の高まりから、競争は激化しており、事業者が単独で申請しても採択される可能性は低くなってしまいます。
補助金申請をお考えなら、是非、アステップ・コンサルティングにご相談ください。
創業・開業時には、安定的に使える運転資金や、創業時の初期投資にお金が必要になります。
しかし、創業時には、事業の実績がなかったり、担保となる資産も少ないため、融資による資金調達などには限界があります。
そういった創業者、開業者におすすめなのが、返済義務のない補助金を活用する方法です。
補助金を上手に活用すれば、安定的な資金を確保することができますが、知らなければ利用できないのが補助金でもあります。創業・開業時に活用できる補助金にご興味のある方は、是非、アステップ・コンサルティングにご相談ください。
<関連:ものづくり補助金の申請方法と制度概要>
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