ものづくり補助金の審査には、設備投資によって達成しようとする事業計画の内容が重要ですが、それだけでなく、所定の加点項目も影響します。そのため、加点項目を積み上げることが大切です。
ここでは、加点項目のうち、「経営力向上計画」について解説します。
経営力向上計画は「本業の成長」のための経営計画認定制度です。
経営力向上計画はものづくり補助金の加点項目になるだけでなく、税制措置、金融支援、法的支援などを受けられるようになりますので、是非、活用するようにしましょう。
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「経営力向上計画」は、人材育成、コスト管理などのマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画です。
政府は中小企業、小規模事業者が自助努力によって競争力を向上させ、持続力を強化することを推奨しています。経営力を向上させる取り組みを後押しする手段として経営力向上計画の認定を受けた認定事業者に、税制や金融の支援などを行っています。
経営力向上計画は、これまでの「経営革新計画」にプラスして2016年度に新たに作られた認定制度です。その大きな特徴は「本業の成長」を目的としている点でしょう。
経営力向上計画は、比較的取り組みやすい経営計画として人気があり、2019年11月末で97,548件(中小企業庁資料による)が認定を受けています。
同じ認定制度である「経営革新計画」では、新たな分野への進出や新しい事業活動の実施など革新性が必要ですが、新たな分野ではなく、現在の本業をより成長させるための計画が「経営力向上計画」です。
これまで、経営革新計画には合わなかった会社にも、マッチする可能性が大きく、まずは経営力向上計画から取り組むという事業者も増えています。
また、事業承継を行う場合にも、事業を継ぐ側が申請し、認定を受けることができます。
▼経営革新計画はこちらをご参照ください
認定を受けられる中小企業者の範囲は「会社または個人事業主で、資本金10億円以下または従業員数2,000人以下」です。
経営力向上計画の認定申請に期限はなく、いつまでにやらなくてはならないということはありません。申込は常時受付が行われています。
計画申請提出から認定まで、標準処理期間は30日(所管が複数の場合は45日)ですから、ものづくり補助金の申請前に、準備しておくことも十分に可能です。
2020年のものづくり補助金の公募も近いと考えられますので、今のうちに経営力向上計画の申請準備を始めた方が良い方も多いでしょう。
経営力向上計画の認定を受けるメリットを見ておきましょう。
認定を受けた事業者は、税制・金融および法的支援による優遇が用意されています。
設備取得への支援
中小企業経営強化税制により設備の即時償却など税制の特例措置が受けられます。
資金繰りへの支援
経営力向上計画に基づく事業に必要な資金繰りについて、政策金融機関の低金利融資や民間金融機関に対する信用保証、債務保証など資金調達の支援が受けられます。
補助金における優先採択
ものづくり補助金を始め、様々な補助金において加点項目になっています。
他社からの事業承継をする場合の支援
不動産の権利移転に係る登録免許税、不動産取得税の軽減
業法上の許認可の承継を可能にする法的支援措置が用意されています。
経営力向上計画の認定を受けることでこういった支援を受けることができます。支援の中には認定前の準備が必要なものもありますので、必ず確認をしてください。
経営力向上計画は、中小企業者にとって比較的認定を受けやすい認定制度と言われます。
まずは取り組みがしやすい経営力向上計画を申請し、その後ものづくり補助金などの補助金申請や経営革新計画に取り組むというように、その後の経営にも活かす事も可能です。
ここでは、経営力向上計画が取り組みやすく、ねらい目と言われる理由を確認しておきましょう。
経営計画の申請書は、量が多く複雑なことも多いですが、経営力向上計画では申請書様式は3枚のみです。
①企業の概要
②現状認識
③経営力向上の目標及び経営力向上の程度を示す指標
といった内容で簡単な計画などを策定し、申請書類に記入します。
事業承継を行う場合は、これらに加えて事業承継の時期及び内容を記載します。
計画策定と申請のために、経営革新等支援機関や、経営コンサルタントなどのサポートを受けることができます。
商工会議所、商工会、中央会などの公的機関、地域金融機関、士業などの専門家などが積極的にサポートを行っています。
また、ローカルベンチマークなどの経営診断ツールを利用することで、計画策定ができるようになっています。
様式が少なくシンプルとはいえ、計画策定には様々な専門性が求められたり、客観店に見て実現可能性が高い計画を作成する必要があります。そのため、専門家の支援を受けると安心です。申請に当たって専門家のチェックやアドバイスはぜひ受けるべきでしょう。
認定を受けるためのポイントはどんなところでしょう。ここでは3つのポイントを挙げて説明しましょう。
経営力向上計画は、それぞれの所管の主務大臣ごとに申請します。現状認識などの申請項目は、事業分野別指針を読んで、自社の計画策定に活かしていきます。
まず自分の会社の事業分野とその事業分野別指針をしっかり確認することが重要なのです。
事業分野は、日本標準産業分類を確認します。
事業分野別指針とは、製造業や卸・小売業、外食・中食産業などの事業分野を、所管する省庁が、事業分野ごとにまとめた指針です。分野ごとに現状認識や課題などがまとめられており、今後の生産性向上の方法等を示していますので、これをしっかり読みこんで、計画に活かします。
事業分野別指針は中小企業庁のサイトから確認できます。
事業分野別指針をもとに、指標の種類を選んで、事業の伸び率を記載します。
いわゆる数値目標です。基本方針に従う場合は、「労働生産性」を指標にします。
労働生産性の指標の計算式は
(営業利益+人件費+減価償却費)/労働投入量*
*労働投入量は、労働者数または労働者数×一人当たりの年間就業時間で表されます。
この指標を使い、計画開始直前の決算(=実績)と計画終了直前の決算(=目標)の2つの数値を算出して、伸び率を記載します。
3年計画の場合には、年率1%以上の伸び率が目標となります。
計画の実施時期は計画開始の月から起算して3年、4年、5年のいずれかを設定しますので、設定した終了時期の決算を目標値とします。
比較的簡単な計画策定とはいえ、事業分野の確認や事業分野別指針の活用が的外れだと、現実とかけ離れた計画になってしまう可能性もあります。
適切で合理的な計画にするためにも、計画策定に慣れた専門家のサポートを受けると効果的でしょう。
ものづくり補助金の加点項目は、申請内容に加えるポイントですから、採択結果に大きく影響します。
近年、ものづくり補助金に申請される事業者の大部分が加点項目にも取り組んでいます。そのため、加点項目なしで申請しても、採択される可能性は低くなってしまいます。
ものづくり補助金では申請書自体の採点に加点項目を加えて審査されます。ですから申請書や事業計画の内容はもちろん重要ですが、採択される確率を高めるためには、加点項目が力を発揮します。
加点項目を積み上げることで、採択される可能性が高まっていくのです。
2019年度の実績をベースとして、ものづくり補助金の加点項目は5つです。簡単にご紹介しておきましょう。
上記の1のうち、1種類の計画が承認取得されていれば加点されます。
逆に、例え2種類以上の計画を認定されていた場合でも、ポイントの加点は1のみです。
経営力向上計画は、これまで述べたように
といったハードルの低さが加点項目として取り組む際のメリットになるでしょう。
ただし、「先端設備等導入計画」、「経営革新計画」の認定を利用する場合、一定の条件をクリアしていれば、補助率を1/2以内から2/3以内にアップすることが可能です。
経営力向上計画には補助率アップの要件はありませんので、その点は注意が必要です。
アステップ・コンサルティングでは、ものづくり補助金の申請書作成はもちろん、加点項目となる経営力向上計画や、経営革新計画などの申請もサポートいたします。
それぞれの事業者ごとに、どの加点項目を狙うのが良いかは異なります。
経営力向上計画を狙うのが良い企業もいれば、経営革新計画を狙った方が良い企業もいます。
アステップでは申請者から現在の状況をお伺いしたのち、それぞれの事業様に最適だと思われる加点項目をご提案いたします。
経営力向上計画や、ものづくり補助金の申請ならアステップ・コンサルティングにご相談ください。
ものづくり補助金は、2012年度から毎年度1千億円前後を補正予算に計上されており、今年度もこの規模がほぼ維持される見通しです。取り組みやすい経営力向上計画を加点項目とすることで、加点が受けやすくなっているといえるでしょう。
まずは情報を確認して、自社に合わせて整理しておきましょう。
計画的に進めていく必要がありますから、採択に向けての準備をしていきましょう。
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