人気の高い「ものづくり補助金」の加点項目となっていることもあり、「経営革新計画の認定取得」に興味のある経営者は多いでしょう。
しかしながら、経営革新計画には補助金の優先採択以外のメリットも用意されています。
また、経営革新計画の申請は事業者様が単独で行うのは難しく、どうすれば良いのか悩まれている方も多いでしょう。
そういった事業者様のために申請方法や申請書の書き方をご説明いたします。
今回は経営革新計画の制度概要や認定取得までの手続き方法、良くある質問などのご紹介です。
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「経営革新計画」の名称にもなっている「経営革新」という言葉ですが、そもそもどういった意味かをご存知でしょうか?
経営革新計画の制度を理解するためにも、まずは「経営革新」が示す意味を確認しておきましょう。
経営革新とは、「中小企業等経営強化法」という法律にもとづき、事業者が「新事業活動」を行うことにより、「経営の相当程度の向上」を図ることを指します。
つまり、新しい事業によって経営を相当程度向上させることが「経営革新」です。
それでは、「経営の相当程度の向上」とは何をすれば良いのでしょう?
経営の相当程度の向上とは、2つの指標によって示されます。それは、以下の2つです。
付加価値額とは「営業利益+人件費+減価償却費」のことであり、経営革新計画で重要視される指標です。
一人当たりの付加価値額とは、この付加価値額を従業員数で除したものとなります。
経営革新計画は3~5年の経営計画となりますが、「経営の相当程度の向上」と認められるためには、これら2つの指標が以下の基準を上回っていることが必要となります。
■経営の相当程度の向上と認められる条件
計画期間 |
条件① 「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」の伸び率 |
条件② 経常利益の伸び率 |
3年計画 | 9%以上 | 3%以上 |
4年計画 | 12%以上 | 4%以上 |
5年計画 | 15%以上 | 5%以上 |
つまり、「付加価値額」又は「一人当たりの付加価値額」は年率平均3%以上の向上、経常利益は年率平均1%以上を向上させる必要があるということです。
経営革新計画で特に重要なのは「付加価値額」です。
付加価値額には人件費も含まれますので、単に人件費をカットして利益を増やすだけでは付加価値額は向上しません。
人件費や減価償却費以外の費用(例えば原材料費など)を削減するか、そもそもとして売上高を増加させる取り組みが必要です。
経営革新計画は政府が実施する公的な制度でもありますので、人員削減を前提とするような取り組みは推奨されないということを意識しておく必要があります。
また、経営革新計画の認定取得には「新事業活動」が前提となっています。
この「新事業活動」がどういったものを対象とするのかも解りにくいと感じる方もいるでしょう。
経営革新計画の新事業活動についても確認しておきましょう。
経営革新計画において「新事業活動」と認識されるのは以下の4つになります。
新しい商品、もしくはサービス(新役務)を開発するのか、それとも新たな生産・販売、もしくは提供方法を導入することが「新事業活動」ということです。
新しい事業を始める事業者はもちろん、既存事業(商品・サービス)であっても、生産・販売・提供方式に対する新規性があれば、経営革新計画の対象となるということが大切です。
これであれば、どういった事業者であっても、経営革新計画の認定を受けられる可能性があるでしょう。
また、経営革新計画で求める「新事業活動」は世に他に無い、「オンリーワン」となる革新的取組である必要まではありません。
申請者にとって新しい取組であり、競合する他社との差別化、競争力確保につながると認められれば、革新的取組と考えることができます。
経営革新計画においては「新事業活動」によって前述の2つの指標を満たす経営計画を作成することが求められますが、実現するための経営革新に対する条件はあるのでしょうか?
中小企業等経営強化法における経営革新には以下のような特徴があります。
上記から、この経営革新が幅広く活用できることが解ると思います。
経営革新計画には対象となる業種に制限がなく、どういった業種でも承認を受けることが可能です。
また、1事業者単独でなく、複数の事業者が共同で申請することも可能です。
さらに、経営革新計画の承認を受けた事業者には、各都道府県がフォローアップ事業として助言・指導も行ってくれます(フォローアップ事業では、政府から委託を受けた経営コンサルタントに無料で経営相談を行うことができます)。
経営革新計画の承認を受けると「ものづくり補助金」の加点要素になりますが、経営革新計画のメリットはそれだけではありません。
補助金を受けやすくなること以外の認定取得による優遇措置を確認しておきましょう。
営革新計画の認定を取得する主なメリットには以下のようなものがあります。
この中で特に有名なのが1の投資・補助金の支援措置でしょう。
経営革新計画の認定を受けると、ものづくり補助金などの補助金で加点項目として認められるなど、優先採択が認められることは良く知られています。そのため、補助金が受けやすくなるのです。
ものづくり補助金で採択される可能性を高めるために、経営革新計画も申請するという事業者もいるでしょう。
また、2の保証・融資の優遇措置のように、「信用保証の特例」や「日本政策金融公庫の特別利率による融資制度」も含まれます。
簡単に言えば、経営革新計画の認定を受けた事業者は、信用保証協会の保証を追加(別枠)で受けられるようになったり、「日本政策金融公庫から優遇金利で融資が受けられる」ようになる可能性があります。
そのため、経営革新計画の認定を受けておくと、資金調達に関する余力は拡大すると言って良いでしょう(それぞれ審査は必要)。
その他の経営革新計画の認定取得によるメリットはこちらをご参照ください。
経営革新計画の対象となる中小企業者、および個人事業主は資本金や従業員数で判別されます。
以下の表のうち、資本金、もしくは従業員数が基準値以下であれば申請が可能となります。
また、経営革新計画の対象となるのは株式会社や合同会社などの「会社」だけではありません。組合や連合会でも対象となるものがあります。
以下の表に含まれる組合、連合会であれば、経営革新計画に申請することができます。
結論から言って、経営革新計画に申請しても承認されず、不承認となる可能性はあります。
経営革新計画は申請までに様々な担当官、担当部署へ相談、確認を依頼する必要があり、その都度、申請内容に対する修正依頼を受けることがあります。
経営革新計画では、申請者の「経営力の向上」が目的となりますので、実現するための具体性、実現可能性などが求められます。
新事業活動によって売上拡大や、増益を図っていくのであれば、どのように競争力を確保し、市場を拡大させていくのかといった点も求められます。
そして、それぞれの修正を反映した経営革新計画の認定申請書を提出すると審査が行われます。
その審査の結果、認定が受けられず、不承認となってしまうこともあります。
実際の申請件数全体のうち、どれだけが承認・不承認となっているかは公表されていませんが、承認されている割合が数割程度だと推測する意見もあります。
なお、ものづくり補助金に申請する場合、最終的な認定取得前で、申請中でも加点を受けることができます。
しかし、経営革新計画の申請中で加点を受けるには注意も必要です。
それは、経営革新計画の認定が受けられなかった時に、加点を前提としてものづくり補助金を申請していると、せっかく補助金で採択されても前提条件を満たすことができなくなってしまうということです。
つまり、経営革新計画の認定を受けるから「ものづくり補助金」も加点して優先採択して欲しいと希望していたのに、ものづくり補助金の申請後に経営革新計画は認定されないことが決定してしまうと前提が崩れます。
この時、無事にものづくり補助金が採択されたとしても、ものづくり補助金を受けることはできません。
前提となった経営革新計画の認定が受けられないため、補助金を受け取ることができないのです。
経営革新計画へ申請する場合、以下の流れに沿って手続きを進めていくことになります。こちらの申請手続きの流れをもとにご説明しましょう。
■経営革新計画の申請手続きの流れ(東京都の例)
*経営革新計画は都道府県ごとに実施していますので、詳細は各都道府県で異なります。
経営革新計画の認定を受けるための申請書を提出すると、窓口となる担当部局(各都道府県担当部局、国の地方機関など)が内容を確認し、必要に応じて詳細確認などの質問を行います。
申請者はこういった質問に都度対応する必要があります。
また、時には申請書の記載方法を修正するように指示を受けることもあります。
質問、修正依頼などに粘り強く対応したうえで、窓口担当者が納得すると最終的な審査にかけられます。質問や修正依頼は1度で終わらず、複数回行われることもあります。
先ほどの東京都の経営革新計画の申請・審査手順で解る通り、審査は毎月20日頃に行われます。
しかし、そのためには前月末までに申請書を提出し、修正依頼などに全て対応を終わらせておく必要があります。
修正、質問などへの対応が終わっていないと、審査を受けるのがさらに1ヶ月先に遅れてしまいます。
また、20日の審査会で承認されたとしても、その結果を受けるのは翌月月初になります。
つまり、順調に進んでも2ヶ月、質問・修正依頼に時間がかかると3ヶ月以上かかってしまうこともあります。
ものづくり補助金などで経営革新計画の加点を受けたいと考える場合、ものづくり補助金の申請時までに経営革新計画の認定を受けておくことが理想です。
申請中でも加点とはなりますが、経営革新計画が不承認となると、ものづくり補助金が認定されても補助金を受け取ることができなくなってしまうためです。
また、経営革新計画の申請書を作成するためには、前提として数値計画を含む事業計画書の作成が必要です。事業計画がなければ申請書は作成できません。
経営革新計画の加点を活用する場合は、時間的な余裕を十分に持ち、ものづくり補助金の申請期日から3~4ヶ月程度前には準備を始めることをおすすめいたします。
経営革新計画の承認を受けるためにもっとも重要なのは「申請書」(革新的取組を含む事業計画書)の作成です。
しかし、経営革新計画の申請書作成は簡単なものではありません。
しっかりと要点を把握したうえで作成する必要があります。
ここでは、経営革新計画の承認を受けるための申請書の記入方法、記入例についてご紹介いたします。
経営革新計画に申請するためには以下のような書類が必要です。
(但し、申請先となる都道府県ごとに別途で必要書類を設けている場合があります。申請前には直接確認しておく必要があります)
様式第9は「経営革新計画に係る承認申請書」と言います。
ここには、申請先、及び申請者の住所、社名(屋号)、代表者名を記載します。
別表1は経営革新計画の別表1には事業計画書の基礎的な内容を記入します。また、業種欄には「日本標準産業分類」の小分類を記入します。
経営革新計画の承認を得るための申請書記入例や、申請手続きについてご紹介しました。
しかし、こういった経営革新計画のための事業計画書・申請書を、申請者が単独で準備することは難しいものです。
そのため、政府・都道府県では、経営革新計画の申請に関するサポート、ご相談は政府が公認する「認定支援機関」に行うように推奨しています。認定支援機関とは、中小事業者の各種経営相談、サポートを行っている実績によって、政府から認定されて支援機関です。
もちろん、アステップ・コンサルティングも認定支援機関として登録されています。
経営革新計画の承認を希望する方、ものづくり補助金の申請を希望する方などは是非ともアステップ・コンサルティングにご相談ください。
アステップ・コンサルティングでは経営革新計画や、ものづくり補助金への申請サポートだけでなく、承認後の事業実施に対するサポートも行っております。そのため、作成した経営革新計画を作成して終わりではなく、実際の経営に活かしていくことができます。
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