事業再構築補助金に申請し、採択されるためには事業計画書が重要です。
いくら要件を充足していても、事業計画書の内容が不十分では採択される可能性も低くなります。
それでは、どのような事業計画書が高く評価され、採択されやすいのでしょうか。
今回は事業計画書に記入すべき内容や書き方・記入方法を説明いたします。
なお、アステップ・コンサルティングは事業再構築補助金で求められる認定支援機関として申請をサポートしています。
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Contents
事業再構築補助金は要件を充足していたとしても、申請した事業者全てが受けられる補助金ではありません。
申請を行った事業者全てに対して審査・評価が行われ、取組内容が優れていると判断された事業者のみが受けることのできる補助金です。
そして、この審査の大部分は提出する事業計画書をもとに行われます。
そのため、事業再構築補助金を受けるためには事業計画書が非常に重要です。
もちろん、嘘や偽りで事業計画書を作成することは絶対にあってはなりません。
実際に実行する取組や行動をもとに事業計画書を作成する必要があります。
しかし、同じ取り組み内容であっても、どのように事業計画書を作成するか、どう説明するのかで結果に違いが生まれることは多々あります。
さらに、好評価を得られやすい事業計画が解っていれば、それを基に実際の事業計画を作成していくことも可能です。
そのため、事業再構築補助金で求められる事業計画書がどのようなものかを理解しておくことが非常に重要になるのです。
最初に事業再構築補助金の要点を簡単におさらいしておきましょう。
事業再構築補助金がどういった制度なのかを理解することは、申請書・事業計画書の記入内容にも関係しますので、制度への十分な理解は必要不可欠です。
事業再構築補助金の最大額は1億円、中小企業の通常枠で6,000万円です。
中小企業の場合、補助率は3分の2となりますので、仮に9,000万円の設備投資を行う場合、申請できる補助金額が6,000万円(=9,000万円×3分の2)となります。
但し、緊急事態宣言枠への申請の場合、補助率は4分の3です。
<中小企業>
|
補助額 |
補助率 |
通常枠 |
100万円~6,000万円 |
3分の2(2/3) |
卒業枠 |
6,000万円~1億円 |
3分の2(2/3) |
また、規模の大きい中堅企業では、補助金の上限額や補助率が異なりますので注意しましょう。
<中堅企業>
|
補助額 |
補助率 |
通常枠 |
100万円~8,000万円 |
2分の1(1/2) *4,000万円超は3分の1 |
卒業枠 |
8,000万円~1億円 |
2分の1(1/2) |
事業再構築補助金に申請する場合、少なくとも以下の3つの要件を充足しなければなりません。
以上、3つの要件を全て満たすことが、事業再構築補助金の最低条件です。
それぞれの要件について詳細を確認しましょう。
事業再構築補助金に申請するには、新型コロナウイルスの影響を受けて売上が減少していることが要件となります。
事業再構築補助金は新型コロナウイルスの影響を受けた事業者が、業況を改善するための取組を行うことを支援する目的の補助金であるため、新型コロナウイルスの影響を受けていない事業者は対象となりません。
売上高の減少は、2020年10月以降の売上高のうち、任意の3ヶ月の合計が、2019年、または2020年の同月売上高と比較して、10%以上低下しているかどうかで判断されます。
任意の3ヶ月で良いので、必ずしも連続した月である必要はありません。
例えば、12月、2月、3月の3ヶ月を用いるということが可能です。
また、この売上高の減少は新型コロナウイルスの影響であることが必要です。
事業譲渡や会社分割で売上高が減少したなど、新型コロナウイルスの影響とは関係なく、減収に至っている場合は対象外です。
事業再構築指針にもとづく取組を行うことが、事業再構築補助金の要件になります。
事業再構築指針では、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編の類型が示されており、このいずれかに該当する取組を行わなければなりません。
事業再構築指針の5類型に共通して言えることは、これまでに行っていた事業(既存事業)をただ「強化する」(製造可能量を増強するなど)や、設備を新しいものに交換するなどは対象とならないということです。
事業再構築指針では、既存事業とは異なる新しい取組を行うことが求められます。
この新しい取組は、既存の商品(サービス)とは提供する設備(製造設備など)が異なることや、顧客の代替性が低い(これまでとは異なる顧客に提供するなど)が求められます。
事業再構築補助金はその名称の通り、事業再構築を目指す事業者を補助するための取組ですので、この事業再構築指針を満たすことが必須条件です。
また、事業再構築補助金は認定経営革新等支援機関と協力して事業計画を策定する必要があります。
申請する事業者が単独で事業計画を作成するだけでは事業再構築補助金に申請できません。
認定経営革新等支援機関とは、政府が定めた基準にもとづき認定された「中小企業を支援する専門家」です。
つまり、専門家の協力のもとに事業計画を作成することが求められるのです。
また、事業再構築補助金への申請時には、認定経営革新等支援機関から発行された「確認書」の提出が必要です。
「確認書」とは、事業計画の作成に関わった認定経営革新等支援機関が計画の妥当性や、実現可能性を認めたことを証明する書類として発行するものです。そのため、必ずどこかの認定経営革新等支援機関に協力を依頼する必要があります。
なお、補助金申請時に相談できる認定経営革新等支援機関としては、金融機関(銀行など)や商工会議所、経営コンサルタント(中小企業診断士など)などがおすすめです。
税理士なども認定経営革新等支援機関として登録されている方が多くいますが、収益計画などの数値面の作成はできても、定性的な事業計画の作成は以外と対応していないという方も多いようです。
どの認定経営革新等支援機関に相談すべきかは、必要とする助言の程度や、資金調達の要否などによっても異なります。
もし、事業再構築補助金の補助金額が3,000万円超となる場合は、金融機関からの確認書が必須となりますので、必ず金融機関も相談先に含めなければなりません。
また、金融機関を相談先とする場合は、金融機関に対して早めに事業計画書を提出する必要があります。
事業再構築補助金の要点が確認できたところで、実際に事業再構築補助金への申請を想定した事業計画書の作成について解説していきましょう。
ここでおさえておきたいポイントとしては、単に申請者が伝えたい内容だけを事業計画書に盛り込むのではなく、公募要領に基づき、審査項目に沿った事業計画書を作成する必要があるということです。
事業再構築補助金には、満たすべきポイント、事業計画書に記入しておくべきポイントというものが定められていますので、この内容をしっかりと検討して、記入することが大切です。
なお、事業再構築補助金の公募要領において以下の項目は最低限記入することが求められています。
それでは、この4つの記入項目それぞれについて確認しておきましょう。
まず事業再構築補助金の申請の前提となる取組内容について記入する必要があります。
具体的な取組み内容は事業計画書の骨子となる部分でもありますので特に重要です。
具体的な取組み内容として具体的に記入が必要な項目をあげていくと以下のようになります。
【補助事業の具体的な取組み内容】
補助事業計画書の作成時に忘れがちですが、新たに始める事業(事業再構築補助金の対象)だけでなく、既存事業などの現在の状況をしっかりと分析し、記入する必要があります。
事業計画書は現状を理解し、強み・弱み・機会・脅威や、市場環境を把握したうえで作成する必要があるのです。
現状把握や理解は軽視されがちですが、事業計画の作成には重要な項目です。
もちろん、事業再構築補助金の審査においても重視されていると考えられます。
このあたりの現況把握や、分析は認定経営革新等支援機関ともよく相談して進めていくのが良いでしょう。
また、事業再構築補助金に限定せず、事業計画書では、他社との差別化や、競争力を確保するための仕組みなどが重要です。
競争力を確保できない事業計画は、実施しても実現性が低く、失敗する可能性が高いと見なされます。
税金を原資とする補助金を、そのような実現可能性が低い事業に充てることは認められません。
そのため、この差別化、競争力確保はしっかりと考えておく必要があります。
事業再構築補助金に対する事業計画書、申請で記入するべき「将来の展望」には、以下のような項目があげられます。
【将来の展望で書くべき内容】
新規事業などに取り組むにあたり、想定しているユーザーやマーケットの設定、及びその市場規模を確認することは非常に重要です。
いくら良い製品やサービスを開発しても、実際に利用してくれるユーザーが存在しなければ意味がありません。
前述の通り、事業再構築補助金では実施する事業が成功するための実現可能性を重視しています。
そのため、実現可能性が高いかどうかを判断するための根拠として、新たに生産・販売する商品やサービスを実際に利用すると考えられるユーザーや市場がどの程度存在するのかを説明する必要があります。
また、事業再構築補助金の成果として販売する商品やサービスが価格面、性能面などでどのように優位性を確保するかの説明も必要です。
ですので、新たな新製品やサービスを展開する場合、具体的にいくらで販売するのも設定する必要があります。
事業再構築補助金を活用した事業実施スケジュールの説明が求められます。
事業再構築補助金は原則として交付決定後に契約、発注する必要があります。
また、交付決定日から12ヶ月以内に全ての事業を終了しなければなりません。
この2点を意識したうえで、12ヶ月以内にどのようなスケジュールで事業を実施していくのかを説明しましょう。
事業再構築補助金を活用して取得する資産について説明が必要です。
取得する資産のうち、単価50万円以上の建物、機械装置・システム等の名称に加え、分類、取得予定価格等を記載します。
この時、単に設備の一般的な名称を記載すれば良いわけでなく、機械設備であれば「型番」など、導入する設備を特定するものも記載が必要です。
事業再構築補助金では、定性的な説明だけでなく、定量的な収益計画も作成する必要があります。
この時、実際の収益計画(予想PLなど)を作成することはもちろん、根拠や計算方法の説明も大切です。
売上高の計画であれば、新規事業としての売上高が発生していくにあたり、どのようにその売上高を計算したのかを文章でも説明します。
また、収益計画の結果として、付加価値額がどのように増加していくのかも説明します。
事業再構築補助金に提出する事業計画書の書き方・記入方法を説明しましたが、ここでは採択されるために確認しておきたい審査項目を解説します。
事業再構築補助金では、①適格性、②事業化点、③再構築点、④政策点、⑤加点項目の5つの観点から審査が行われています。
これらの項目ごとに評価を受けられるように記入することが、採択されるためには非常に重要です。
採点基準が解れば、どのように説明するべきかがおのずと解るはずです。
適格性としては、前述の3つの要件を満たしていることと、付加価値額が基準を満たすことの2点が確認されます。
付加価値額は補助事業終了後、3~5年間で年率平均3.0%以上の増加を達成するものでなければなりません。
これらは、事業再構築補助金に申請するための最低基準とも言える項目ですので、必ず要件を充足しておきましょう。
また、この付加価値額の増加を根拠づける売上高や費用に関する計算根拠も大切です。
単に数値だけ基準を満たせば良いわけでは無く、合理的な根拠を持って数値計画を作成していることが求められます。
事業再構築補助金の審査における事業化点とは、申請する事業への取組が実際に成功すると考えられるか、実現可能性や妥当性に関する審査です。
そのため、いかに取り組む事業が成功する(実際の需要を得て、販売が拡大していく。利益が生まれる)のかを客観的な説得力を持って説明していく必要があります。
事業化点の評価を得るためには、以下の点をしっかりと確認しておく必要があります。
【事業化点で意識したい項目】
ここで気を付けたいのが、既存事業とのシナジー効果です。
事業再構築補助金は、既存事業とユーザーや需要の代替性が低く、新しい業種などへの大胆な転換が求められる一方で、既存事業とのシナジー効果も求められます。
そのため、既存事業と全く関係の無い新たな事業に進出するというだけでは事業化点の評価は得られません。
既存事業と新規事業がどのように関連するのか、相乗効果によるメリットが期待できるのか、シナジー効果についてしっかりと考えて、記入しておくことが高評価につながります。
このシナジー効果をどのように創出していくかは事業再構築補助金のポイントと言っても良いでしょう。
事業再構築補助金は、事業再構築指針にもとづく事業計画が求められますので、どのように指針に沿った事業計画であるのかを明確にしておく必要があります。
この時、以下の点が審査にて評価されています。
【事業再構築で意識したい項目】
事業再構築の必要性についても求められている点が大切です。
なぜ事業再構築に取り組む必要があるのか、どのような効果を期待しているのか、必要性についてしっかりと説明しましょう。
政府が推進している政策と合致する取組は審査でも高評価が得られます。
政策点は必ず満たさないといけないわけではありません。また、取組内容によっては全く関係のないものも多いでしょう。
ここは該当するものがあれば、しっかりとアピールしておくという認識で問題ありません。
事業再構築補助金で評価される政策点には以下のようなものがあります。
【政策点が認められる具体例】
加点項目というのは、事業計画に対する審査において、計画自体への評価とは別枠で点数が得られる制度です。
そのため、加点項目を多く満たすと、それだけ採択される可能性も高くなるといます。
*加点項目への配点など、詳細は非公表
事業再構築補助金の加点項目は、努力して満たすというものではありませんが、該当する方は電子申請の際に該当箇所にチェックするのを忘れないようにしましょう。
【事業再構築補助金の加点項目】
事業再構築補助金は従来から実施されている同種の補助金(ものづくり補助金など)と、添付する書類が大きく異なります。
そのため、申請時に添付する書類に不備が多いとも言われています。
軽微な不備であれば、後日修正するといった対応も考えられますが、内容次第では審査を行うことができず、そのまま不採択となる懸念もあります。
せっかく、前述のような事業計画書作成を行ってきたにもかかわらず、不備書類によって審査に落ちたとなれば非常に残念です。
不備とならないように書類準備を行いましょう。
以下では、事業再構築補助金で特に多いとされる不備事例ですので、確認しておきましょう。
事業再構築補助金は売上高の減少要件があるため、減収を証明するための根拠資料の提出が求められています。
具体的には、確定申告書のうち法人であれば、別表1や法人概況説明書(裏・表)、月次試算表、売上台帳などが該当します。
個人であれば別表1に加えて、所得税青色申告決算書が必要です。
この資料を添付していなかったり、実際に売上高の減少があった月の資料ではなく、別の時期の資料を提出していた事例が多く見られたようです。
認定経営革新等支援機関の確認書を提出する必要がありますが、確認書を誤って作成していた事例が見られたようです。
特に取り上げられているのは、確認書に記載する申請者の名称が間違っていたり、確認書を認定経営革新等支援機関ではなく、申請者自身が作成してしまっていたものがあったとのことです。
確認書は必ず認定経営革新等支援機関に作成を依頼しましょう。
また、補助金申請になれていない認定経営革新等支援機関では、作成を誤ることも考えられますので、慣れたところに依頼するか、確認書の内容を申請者自身もしっかりと確認するようにしましょう。
事業再構築補助金では、「経済産業省ミラサポplus」で作成した事業財務情報を添付する必要があります。
この事業財務情報は事業再構築補助金でのみ求められる資料で、使い方や作成方法が解らないという事業者も多かったようです。
事業再構築補助金への申請は全て電子申請によって行われ、添付書類もWEB上で提出します。
データでの提出となるため、誤ってファイルにパスワードがかかったまま提出していた事例もあったようです。
また、提出したファイルが破損しており、開けなかった事例も報告されています。
パスワードや破損があると、審査を行うことができませんので、提出前に確認するようにしましょう。
アステップ・コンサルティングは経済産業省・中小企業庁に認定された認定経営革新等支援機関として、事業再構築補助金の申請をサポートしています。
事業者様の現状分析や、事業計画書の作成、事業計画書の作成など、申請までの全て過程をサポートいたしますので、安心して申請手続きを行うことができます。
要件の充足確認や、採択可能性の簡易診断なども無料で行っておりますので、事業再構築補助金への申請を検討されている事業者様は、まずはお気軽にご相談ください。
今回は事業再構築補助金を対象として、採択されるための事業計画書の作成方法・記入方法について解説しました。
しっかりと事業計画を立てることは言うまでもなく重要です。
しかし、計画を立てていても、それが補助金申請時の審査に伝わらなければ評価も低くなってしまい、採択されない可能性は高くなってしまいます。
今回ご紹介した内容をもとに審査に伝わる事業計画書の記入・書き方を意識してみましょう。
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