新型コロナウィルスの影響はなかなか収まらず、従来の事業形態を維持しながら継続的な利益を上げることが難しくなっている業種、業態も少なくありません。
そうした旧来の事業形態では利益を上げることが難しくなっている事業者に、その事業を再構築し「新分野展開や業態転換、事業・業種転換等の取組、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等を目指す企業・団体等の新たな挑戦を支援」するために、経済産業省が新しく制度設計したのが「事業再構築補助金」です。
コロナの影響を受けにくい業態に転換したり新分野に進出したりして、この逆境を乗り越えるための事業者の働きを応援するこの「事業再構築補助金」ですが。
その対象として、医療法人や医療機関は当てはまるのか、今回解説します。
医療法人、医療機関は「医療従事者が大変!」というニュースにもあるように、コロナウィルスでむしろ激務になっていて業態変換する必要はないようにも思えますが、実際に営業再構築補助金を使うことができるのでしょうか?
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まず、事業再構築補助金の概要について確認しておきましょう。
事業再構築補助金の対象は全国の中小企業と中堅企業です。
と一般的に定義されますが、資本金1000万円未満の小規模事業者や法人ではない個人事業主ももちろん対象となります。
逆に、資本金10億円以上の大企業は事業再構築補助金の対象外となります。
より体力が弱い小さな会社を助けるための制度であるとご認識ください。
なお、中小企業者の定義に該当するかどうかの詳細は業種によっても異なりますので確認方法を記載しておきましょう。
以下の表の資本金、もしくは従業数のどちらか以下であれば、中小企業者となります。
■中小企業の定義
事業再構築補助金は、令和年3月26日に1回目の公募を開始し、公募は1回ではなく、同年度中にさらに4回程度実施する予定です。
条件を満たせば基本的に全員支給される助成金と違い、補助金は枠が決まっていて審査があることに注意してください。
新型コロナウイルスの影響を受けて売上高が減少していることに加え、事業再構築指針に基づいた事業計画を策定している事業者のなかから審査で採択者が決定されます。
中小企業向けと中堅企業向けで補助金額や枠が異なります。それぞれの補助金額と補助率の関係は以下の表をご参照ください。
■中小企業向け
区分 | 補助金額 | 補助率 |
通常枠 | 100万円~6000万円 | 2/3 |
卒業枠 | 6000万円~1億円 | 2/3 |
緊急事態宣言特別枠 | 100万円~1500万円 | 3/4 |
卒業枠とは、今の事業を(諦めて)卒業することではなく、中小企業を卒業し中堅企業へステップアップするために補助金を支給するというものです。
そのため、補助事業期間中に資本金などの規模を拡大させ、中小企業の定義から「卒業」する計画である必要があります。
規模拡大による事業拡大への取組と考えた方が良いでしょう。
緊急事態宣言特別枠は緊急事態宣言による時短や自粛要請による影響を受けた場合に利用できる特別枠で。補助率も他の枠と比べて優遇されています。
■中堅企業向け
区分 | 補助金額 | 補助率 |
通常枠 | 100万円~8000万円 |
1/2(100万円~4000万円) 補助率2/3(400万円超) |
卒業枠 | 8000万円~1億円 | 1/2 |
緊急事態宣言特別枠 | 100万円~1500万円 | 2/3 |
グローバルV字回復枠は100社限定の「特別枠」となっています。
激戦が予想されます。緊急事態宣言特別枠は中小企業と同じですが、補助率がやや低くなっています。
事業再構築補助金を申請できる条件は下記になります。
緊急事態宣言特別枠を使わなければ、申請へのハードルはそれほど高くありません。
補助金の資金使途は事業再構築や新分野の展開のために必要な下記の資金になります。
逆に、事業再構築補助金を利用できないのは下記の費用です。
いつもかかっている会社の経費は補助金の対象外であり、何か新しいことにたいする補助であることを意識してください。
以上を踏まえていただき、本題に入ります。
医療法人(「医療法人〇〇〇会」など)と医療機関ですが、事業再構築補助金の対象となるかどうかについて確認しました。
事業再構築補助金では以下の通りに規定されています。。
一般的な医療法人:事業再構築補助金の対象にならない
「社会医療法人」:事業再構築補助金の対象となる
個人の医院やクリニックは対象(事業再構築補助金への申請可能)
(事業再構築補助金「公募要領」から)
医療法人が事業再構築補助金の対象となるかどうかは、「社会医療法人」であるかどうかで決まります。
医療法人には様々な形態があり、社会医療法人はその1つです。
特定医療法人や、その他医療法人など、別の携帯で行っておられる医療法人は今回の事業再構築補助金では対象外となりました。
基本的に、大病院等は事業再構築補助金の対象外、個人の開業医、クリニックは対象となりうると考えると良いかと思います。
大病院の場合、例外的に「社会医療法人」(公益性の高い民間の認定された病院)のみ、補助金の対象となります。
個人事業主として、クリニックや診療所を開業している医師の場合、事業再構築補助金の対象となるので、開業医の先生方はご安心ください。
それでは、この制度を使って、特にクリニックは何ができるのでしょうか?
いくつか具体例を挙げます。参考にされてください。
新型コロナウィルスの感染拡大で大幅に拡充されたオンライン診療です。
現在は特例で、初診からのオンライン診療も可能になっています。
オンライン診療は接触機会を減らし感染リスクを下げる「守りの診療」だけではなく、全国津々浦々の患者さんを診療することができる「攻めの診療」も可能になります。
現に、他にない特徴を持つクリニックの中にはオンライン診療を活用して、全国の患者さんを診察し、事業を拡大しているところもあります。
専用のオンライン診療アプリだけではなく、様々なツール、機械を導入することで、対面診察と同等のクオリティを確保できます。
採血やレントゲンなど、対面でしかできない診察もありますが、オンラインでできる診察範囲は機器への投資で拡大します。
こちらに事業再構築補助金を使うことができそうです。
発熱外来などを積極的に行っているクリニックでも、発熱患者と慢性疾患の患者さんのスペースを分けることに苦労されている方も多いようです。
院内のトリアージ環境を整備することで、単に発熱外来時間とそうでない患者さんの時間を分ける以上の効果があります。
もちろん、医師や看護師、スタッフの感染リスクを下げることにもつながります。
院内のトリアージ環境整備、工事にも事業再構築補助金を申請することが可能になるでしょう。
教育訓練等の研修に事業再構築補助金を充当することも可能です。
感染症対策のための研修や、医師や看護師が最新機器の使い方を学ぶための講習など、ウィズコロナを見据えた、知識、技能向上のための費用として使うこともできそうです。
これらいずれも「・・そうです」「・・でしょう」と断定していないのは、事業再構築補助金がまだスタートしたばかりで運用上どうなるかわからない面があるからです。
最新の情報を常にチェックしてください。
なお、ここまで医療法人・医療機関は事業再構築補助金の申請対象になるかどうかを解説してきました。
前述の通り、社会医療法人・個人開業医は対象なりますが、その全てが申請できるわけではありません。
事業再構築補助金に申請するには、「売上高減少要件」を充足していることが最低必要です。
売上高減少要件とは、2020年11月~2021年3月までの6ヶ月間のうち、任意の3ヶ月間の合計売上高が、新型コロナウイルス以前の売上高(2019年、もしくは2020年の同月)に比べて、10%以上減少していることという要件です。
つまり、新型コロナウイルスの影響で売上が減少していないと事業再構築補助金には申請できないのです。
仮に、社会医療法人や、個人開業医の方で対象になっていても、この売上高減少要件を満たさないと申請できませんので、ご注意ください。
なお、個人開業医の方で、売上高減少要件を満たさない方は「ものづくり補助金」をご検討ください。
ものづくり補助金にはこの要件がなく、個人開業医も申請可能です。(残念ながら医療法人は申請できません)
アステップ・コンサルティングは中小事業者向けの経営コンサルティングを行っています。
もちろん、補助金申請のサポートも行っています。
また、アステップ・コンサルティングは、これまでの支援実績が評価され、「経営革新等支援機関」として経済産業局の認定も受けておりますので、各種サポートを安心してお任せいただけます。
事業再構築補助金の申請をご検討中の事業者は、是非、アステップ・コンサルティングにご相談ください。
事業再構築補助金は令和2年度3次補正予算でできた新しい補助金です。
具体的な運用や審査基準などまだ不透明な点もあるため、最新の情報をチェックしつつ、社会保険労務士など専門家のアドバイスを適宜受けることをおすすめします。
また、補助金は今後も新しいものが出てくることが予想されます。
そのときにもすぐに対応するため。「GビズIDプライム」を取得しておくとよいでしょう。
事業再構築補助金はクリニック及び社会医療法人が対象であり、それ以外の医療法人は対象外、ということを憶えておいてください。
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