歯科医院や歯科技工所が設備投資をする際に補助金を受け取れることはご存じでしょうか?
補助金を活用すれば購入代金の一部を賄ってもらえますので、自己資金が少なくて済みます。
ものづくり補助金であれば最大3,000万円まで補助を受けることができます。
こちらの記事では、歯科医院や歯科技工所が実際にものづくり補助金を利用する際の注意点や活用例などを分かりやすくご紹介します。
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Contents
まずは簡単にものづくり補助金についてご説明します。
ものづくり補助金とは、歯科医院・歯科技工所などの中小企業等における生産性向上に資する革新的サービス開発と試作品開発、生産プロセスの改善などを行うための設備投資を支援する補助金のことを指します。
歯科医院や歯科技工所などが適用される「一般型」「低感染リスク型」は最大で1,000万円の補助を受けることができます。
また、必要な設備投資額に対し、消費税を除いた金額の2分の1~3分の2を補助してもらうことができます。
つまり、1,000万円(税抜き)の設備購入であれば、500万円~666万円を補助してもらい、残りを自己資金などで賄えば良いということになります。
歯科医院や歯科技工所などで購入する設備は、進歩も早く、最新設備などは高額なものも多いため、こういった補助金は是非活用したいところでしょう。
続いて、早速歯科医院や歯科技工所のものづくり補助金の活用事例をみていきましょう。
実際にものづくり補助金で採択されている「歯科医院・歯科技工所の事業計画」の一部を抜粋すると以下のようなものがあります。
<実際に採択されている歯科医院・歯科技工所の事例>
都道府県 |
活用例・採択事例 |
北海道 |
CT診断装置と3Dスキャナーによる高精度治療で生産性アップ |
青森県 |
高性能コンピュータミシンの導入による縫製業の生産性 向上の取組み |
岩手県 |
3D-CT連動歯科用CAD/CAMミリング装置導入による生産性向上 |
東京都 |
CAD/CAM装置導入によるインフォームドコンセント医療ワンストップサービスの提供 |
岐阜県 |
超高齢社会における歯科用CAD・CAMシステムを活用した通院弱者への新しい治療スタイルの提供 |
宮城県 |
工程間データ連携を活用した貴金属リサイクルプロセスの構築 |
愛知県 |
歯科矯正治療期間の大幅短縮と矯正装置のサプライチェーンの改善 |
三重県 |
金型修繕管理業務における共用システム構築及び予知保全への高度化 |
茨城県 |
治療と技工のデータ連携により修理しながら長く愛用できる入れ歯生産体制の設備 |
三重県 |
多品種の歯科技工物治療・製作プロセスの生産性向上のための高度連携 |
三重県 |
40 デジタルネットワークを活用した最適な歯科技工物治療・製作プロセスの構築のの取り組み |
愛知県 |
データ連携により歯科矯正装置の供給を可能とする新たなサプライチェーンシステムの構築 |
愛知県 |
高齢化及び歯科医療ニーズに対応するデジタル歯科技工のチェアサイド連携体制の構築 |
北海道 |
むし歯の見える化と患者管理ソフトによる予防歯科システムの構築の普及 |
北海道 |
地域における歯科技工プロセスのデジタル化促進による高齢化への対応 |
岩手県 |
CBCTの導入による高精度な口腔外科治療の提供 |
宮城県 |
高精度マージンコントロールによる、審美性と適合性を兼ね備えた補綴物製作 |
山形県 |
健康寿命と平均寿命のギャップの解消に口腔の健康を通じて貢献する |
福島県 |
創業から100年以上、老舗歯科クリニックの新たな第一歩。健康寿命延伸プロジェクト |
福島県 |
震災復興関係者の短期治療ニーズに応えるワンデイデジタル補綴 |
茨城県 |
補綴物作製の効率化による障害者歯科医療への貢献と職場環境の改善 |
茨城県 |
三次元診断を用いた治療事故防止と、精密術前検査による高い治療精度の追求 |
栃木県 |
将来の歯列や噛み合わせを考慮した究極の予防治療の提供 |
群馬県 |
歯科治療の高度化と身元確認の迅速化を可能とする三次元口腔イメージング環境の構築 |
一部の事例ですが、このような活用例があります。
近年のものづくり補助金活用事例で多くみられるのが、口腔内スキャナーや、3Dプリンター、歯科用CTなどを活用する取り組みです。
こういった設備の導入を検討されている歯科医院・歯科技工所や、前述の歯科医院の採択事例にある取組みなどを検討されている歯科医院などは、是非、ものづくり補助金の活用を検討されてみることをお勧めいたします。
歯科医院・歯科技工所での、デジタル技術を積極的に活用した治療機械を活用する取り組みが見られます。
また、これらの設備を活用し、従来の治療方法から何かを改善させるといった点での事業計画を作成しています。
歯科医院や歯科技工所がものづくり補助金を活用するメリットは以下になります。
まず、歯科医院や歯科技工所がものづくり補助金を活用することで当たり前ですが、補助金をもらうことができます。
補助金は融資と違い、返還する必要がありません。
利息もかかりません。
ものづくり補助金も決められた手続き通りに事業を実施すれば、返還する必要がありませんので、文字通りお金をもらえると言えます。
ものづくり補助金は最大1,000万円までの補助金をもらうことができますので、事業拡大に向けて様々な取り組みをすることができます。
ものづくり補助金で設備投資をして、万が一その設備があまり役に経たなかった場合でも、補助金は一切返す必要がないため、借入するとしても金額は少なくて済みますし、リスクを最低限に抑えることができます。
投資が失敗して、利益の増加に貢献しなかったとしても、損失を抑えることができます。
そのため、高額な機械を購入することに消極的な歯科医院でも、比較的設備投資を行いやすくなります。
これだけでも、ものづくり補助金を活用するべきということが分かります。
設備投資を行う際、導入する医療設備の耐用年数内に、収入・利益を増やして投資資金を回収する必要があります。
投資資金を回収できなければ、せっかく設備投資しても、結果的に歯科医院の資金は減少してしまうことになります。
また、歯科医院で導入する医療設備には数百万円を超える高額なものも多いため、導入効果が高いと考えていても、設備投資に躊躇される歯科医も多いでしょう。
しかし、ものづくり補助金を活用して、設備投資の一部を補助してもらえば、この投資資金の回収のハードルを大幅に下げることができます。
1,000万円の設備投資による利益の増加見込額が、年間100万円であった場合、補助金がなければ、投資資金を回収するのに10年間かかることになります。
しかし、仮に半額となる500万円を、ものづくり補助金で支援してもらうことができれば、自己資金は500万円で済み、5年間で投資資金を回収できることになります。
歯科医院を利用する患者へのアンケート調査において、歯科医院を選ぶ際の基準に最新治療が受けられることという点が高順位に挙げられています。
また、患者の身体的な負担の少なさや、治療回数・通院日数を軽減できる歯科医院には人気が集まる傾向も見られます。
実際、ものづくり補助金の対象となるような最新設備を導入している歯科医院の多くが、これらの最新機械を導入していることを、歯科医院のホームページなどで積極的にアピールしています。
こういった状況下、最新の歯科医院用治療設備を導入することは、他の歯科医院との差別化としても非常に重要です。
治療が効率化したり、品質が向上するだけでなく、患者の集客力の拡大としても効果が期待できます。
ものづくり補助金を活用して、競争力を高めることができるのは大きな魅力となるでしょう。
一方、歯科医院や歯科技工所がものづくり補助金を活用するデメリットは以下です。
ものづくり補助金を申請するには多くの書類が必要になり、その書類を準備するには必ず人員や時間を割かなければいけません。
仮に、事業主である院長先生がご自身で事業計画書や、申請書類を作成したとすれば、それに要する時間を作る必要があります。
その分の診療時間が減ってしまうとなれば、それは収入の減少ともなり得ます。
また、ものづくり補助金の申請をしたからといって、必ず誰もがもらえる補助金ではないため、人員や時間を割いたわりに、補助金が採択してもらえず、受けることが出来なかったということもあります。
⇒ ものづくり補助金で採択されるには「加点」を多く取ることが大切
ものづくり補助金に申請した結果、無事に採択され、実際に補助金を受け取った場合にも、約5年程度はモニタリング期間があります。
このモニタリング期間には、ものづくり補助金を活用して、どのように収入や利益が変化したのか、事業にどのように活かせているのかを報告する必要があります。
また、ものづくり補助金では、従業員に対する「地域別+30円」、「給与支給総額を年率1.5%以上増加」といった目標設定が条件となっているため、こちらの取り組み状況についても報告する必要があります。
利益が増加したにもかかわらず、従業員の給与は条件を満たさなかったとなれば、一部返還を求められる可能性もあります。
⇒ ものづくり補助金は採択されてからが重要!採択後の手続き内容まとめ
歯科医院や歯科技工所がものづくり補助金申請を行う際の注意点は以下になります。
ものづくり補助金に申請できるのは中小企業・小規模事業者のみになります。
そして、この中小企業、小規模事業者の定義には、「医療法人」が含まれていない点が重要です。
そのため、同じ歯科医院でも、個人事業主であれば対象となって申請できますが、医療法人の歯科医院などは対象外となります。
そのため、医療法人はものづくり補助金に申請することすらできません。
歯科医院や医院、クリニックでものづくり補助金の対象になるのは、個人事業主として開業している歯科医院のみという点が重要です。
なお、前述の通り、ものづくり補助金を受け取ることのできる歯科医院は、個人事業主としての開業医のみで、医療法人は対象になりません。
この医療法人は、ものづくり補助金が利用できないというのは、補助金受取時だけでなく、その後の5年間にも適用されます。
仮にものづくり補助金を受け取る時に個人開業医で、その後5年以内に医療法人になる場合は、補助金の一部を返還する義務が発生してしまいます。
返還する補助金の金額は、対象となる設備の時価・耐用年数や、ものづくり補助金受取からの期間などによって計算されます。
ものづくり補助金の申請が下りた場合、すぐに補助金がもらえるわけではなく、完全後払いシステムとなります。
例えば、1,200万円分の機械を導入する場合、まずは自分で1,200万円を支払って、機械の納品・検収などを行う必要があります。
その後、実績報告と言われる手続きや、事務局になる実地検査などを経て、補助金を受け取ることができます。
ですので、一旦は全額ご自身でお金を用意し、支払いできる必要があります。
借入が必要であれば、ご自身で金融機関などに相談して、融資を受けます。
なお、ものづくり補助金の特徴として、単に機械を購入します、買い替えしますといったものは対象にならない点に注意が必要です。
ものづくり補助金では、革新的な取組みが、補助金を受け取れる対象とされています。
この革新性には「申請者自身にとっての革新性」と「業界内における革新性」の2点を抑える必要があります。
つまり、歯科医院・歯科技工所自身にとって新しい取り組みであっても、業界内では広く普及し、一般化している事業では、革新性が低いと評価される可能性が高くなります(そうなると採択されにくくなります)。
設備投資を経て、どのように他の歯科医院・歯科技工所と差別化し、優位性を構築していくかの検討が必要です。
(アステップ・コンサルティングでは、事業計画の作成や、これらの革新性・差別化などについてもサポートさせて頂きます)
また、これらの内容は、申請書・事業計画書などのなかで、設備投資として購入する機械を、歯科医院・歯科技工所でどのように活用し、革新性のある取組みを行うのかをしっかりと説明しないといけません。
アステップ・コンサルティングでは、数多くのものづくり補助金申請者へのサポート実績があります。
また、歯科医院・歯科技工所など、病院・クリニック向けの経営コンサルティングにも積極的に取り組んできた実績から、歯科医院の事業計画作成などの実績も豊富です。
ものづくり補助金への申請をご希望されている方は、まずご相談ください。
⇒ アステップ・コンサルティングの歯科医院向け「ものづくり補助金」申請サポート
歯科医院や歯科技工が、ものづくり補助金を利用する際の注意点や活用例などをご紹介してきました。
事業拡大のために利用できるものづくり補助金ですが、補助金が必ずもらえるとは限らない、もらえても後払いシステムでもらえるということをしっかり頭に入れたうえで検討するようにしましょう。
ですが、これからの未来のためにも、補助金制度がある時に最新設備の導入を検討することで経営を明るくすることもできます。
(参考)
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