近年,異常気象?などによる自然災害で甚大な被害を受けるケースが増えています。
今年に入っても、平成30年7月豪雨、大阪府北部地震そして今回の北海道を襲った最大震度7の大地震など生活や事業基盤を一瞬にして失う自然災害が相次いでいます・
本稿では、平成30年7月豪雨で被災された小規模事業者の事業再建支援を目的に使われる補助金「被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)」の特徴や、申請のポイントをご紹介いたします。
Contents
補助金の正式名称は、被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)と言い、従前からある小規模事業者持続化補助金の1つとして実施されます。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の公募要領は、50頁を超える文量となっていますので、ポイントを整理してご説明します。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の対象となる事業者には、地域と災害被害の状況で制限が設けられていますので、ご確認ください。
・岡山県・広島県・愛媛県
平成30年7月豪雨により、自社の事業用資産に損壊等の直接被害を受けた、もしくは、売上減の間接被害が生じた事業者であること。
・岐阜県・京都府・兵庫県・鳥取県・島根県・山口県・高知県・福岡県
平成30年7月豪雨により、自社の事業用資産に損壊等の直接被害を受けた事業者であること。
補助金申請にあたって、被害を証明する必要の有無や、方法は申請者毎の状況に応じても異なります。地域的に対象に含まれ、被害を受けた方はアステップ・コンサルティングにご相談下さい。
・策定した「経営計画」に基づいて実施する販路開拓のための取組であること。
・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること
*被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)では、申請前に商工会議所への経営計画の確認依頼が必要です。そのため、余裕を持った日程で準備する必要があります。
補助対象経費の3分の2以内
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)では、被災地により、補助上限額が異なっていることに注意が必要です。
・岡山県・広島県・愛媛県の事業者
⇒200万円
・岐阜県・京都府・兵庫県・鳥取県・島根県・山口県・高知県・福岡県の事業者
⇒100万円
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の申請の対象となる経費です。
・使用目的が本事業の遂行に必要なものと明確に特定できる経費
・交付決定日以降に発生し対象期間中に支払が完了した経費【特例あり】
・証拠資料等によって支払金額が確認できる経費
【特例】平成30年6月28日以降に発生した経費は、遡って補助対象経費として認められています。
補助対象となる経費
経費内容 |
①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費 ⑤開発費、⑥資料購入費、⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金 ⑩専門家旅費、⑪車両購入費、⑫設備処分費、⑬委託費、⑭外注費 |
受付締切
第2次受付締切:平成30年10月5日(金)[締切日当日消印有効]
提出書類
提出書類の詳細はアステップ・コンサルティングにご相談下さい。
*「被害状況または売上減による間接被害状況がわかる資料【必須】」
公的書類(罹災証明書等)や写真など具体性が求められています。
採択結果公表(予定)
平成30年10月末~11月初頭頃
補助事業実施期限
平成30年6月28日(木)【※特例】~平成30年12月31日(月)
★重要
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)では、【※特例】により、補助対象事業に係る経費であれば、平成30年6月28日(木)に遡って補助対象経費として認められます。
通常の補助金と異なり、被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)では、実質的に補助事業実施期間が長くなりますので、有効に活用しましょう。
自然災害の被害の増加に伴い、「甚大災害指定」を受けると、被災された小規模事業者の事業再建支援を目的に持続化補助金のスキームが活用されています。
こういった持続化補助金のスキームが使われるケースが多い様に思います。
平成28年の熊本地震では、地震の影響により、顧客や販路の喪失という状況に直面した熊本県全域および大分県の一部地域の小規模事業者が経営計画に基づいて実施する販路開拓等に対し、災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助金)が実施されました。
被害の大きさなどの条件による違いでしょうが、今回の被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)と、従前の補助金の公募要領に見られる条件にも微妙な差異が見受けられます。
主な項目について、両補助金の公募要領を整理してみました。
下記表に取りまとめたとおり、今回の被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)は、以下の特徴があります。
① 募集期間(二次公募)が短いこと(準備や申請作業に時間の余裕が無い
② 特例として交付決定日以前の経費が認められる(熊本の場合、事業実施期間が長い)
ことに特徴があると言えます。
<特徴比較>
項目 |
平成30年7月豪雨 |
平成28年熊本地震 |
補助対象事業者 |
事業用資産が直接被災した、もしくは、売上減の間接被害が生じた事業者であること。(地域間差異あり) |
事業用資産が直接被災した、もしくは、売上減の間接被害が生じた事業者であること。(地域間差異なし) |
補助率 |
補助対象経費の3分の2以内 |
同左 |
補助上限額 |
200万円又は100万円 |
200万円 |
補助対象事業 |
策定した「経営計画」に基づいて実施する販路開拓のための取組であること |
策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。 |
募集期間 |
平成30年8月21日 ~平成30年9月7日(一次) ~平成29年10月5日(二次) |
平成28年11月4日 ~平成28年11月25日(一次) ~平成29年1月27日(二次) |
補助実施期間 |
平成30年6月28日【特例】~平成30年12月31日 |
交付決定~平成29年12月31日 |
平成28年熊本大地震の補助金について、やはり気になるのは、採択件数や採択率です。
採択率(応募件数)の公表はされていませんが、採択案件の一覧は公表されています。
熊本県の場合、一次及び二次公募の合計で550件強の案件が採択されています。平成28年度補正予算及び追加公募による持続化補助金では、熊本県の採択件数は、250件弱となっています。これは単純計算による採択率で、46%弱となります。
通常の持続化補助金の採択率は30%~40%と言われていますので、この水準を考慮しても、平成28年熊本大地震の補助金の採択率は、かなり高かったと言えるでしょう。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)は、災害による被害を受けた方の再建を目的とする補助金だけに、ある程度積極的に採択される傾向が強いと考えられます。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)は、採択率が高いと想定されるとしても、やはり補助金を活用して事業を再建するためには、きちんとした事業計画(申請書)づくりが不可欠です。
公募要領には、審査の観点が説明されています。当該補助金に限らず、少しでも採択の可能性を高めるためには、審査の観点に沿った申請書づくりが必要となります。
また、被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の採択審査は、有識者等により構成される審査委員会にて行われますので、一文一意、図表の活用など、まずは、審査員に読んでもらう工夫を心がけてください。
<審査のポイント>
Ⅰ.基礎審査 |
次の要件を全て満たすものであること。要件を満たさない場合には、その提案は失格とし、その後の審査を行いません。
①必要な提出資料がすべて提出されていること ②「補助対象者」(P.2~5)および「補助対象事業」(P.23~24)の要件に合致すること ③補助事業を遂行するために必要な能力を有すること ④小規模事業者が主体的に活動し、その技術やノウハウ等を基にした取組であること |
Ⅱ.加点審査 |
経営計画書・補助事業計画書について、以下の項目に基づき加点審査を行い、総合的な評価が高いものから順に採択を行います。
①自社の経営状況分析を踏まえた経営方針と今後のプランの適切性 ◇「平成30年7月豪雨」の影響を踏まえた自社の状況や、顧客ニーズや市場動向、自社や自社の提供する商品・サービスの強みを十分に把握のうえ、それらを踏まえた経営方針と今後のプランを適切に立てているか。
②「平成30年7月豪雨」の影響 ◇自社の経営上、「平成30年7月豪雨」の影響を受けた事業者と認められるか。
③補助事業計画の有効性・適切性 ◇補助事業計画は、豪雨の影響を克服し、販路開拓を目指すものとして、経営計画の今後の方針・プランを推進するために必要かつ有効なものか。また、その内容は、具体的で、当該小規模事業者にとって実現可能性が高いものとなっているか。
(共同申請の場合:補助事業計画が、全ての共同事業者における、それぞれの経営計画の 今後の方針・プランを推進するために必要か。) *岡山県・広島県・愛媛県に所在する事業所で直接被害を受けた事業者で、引き続きこれら 3県内で販路開拓の取り組みを行う場合は、政策的観点から加点を行います。
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Ⅲ.その他 |
「小企業者」(常時使用する従業員の数が5人以下の事業者を指します。)が全体の5割以上採択されるよう、優先的に採択します。
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(注記)太字、下線は、筆者にて編集
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の申請では、「加点審査項目」も明確にされています。加点項目を多くおさえた申請書作成は重要なポイントになります。
また、被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の申請で最も留意すべき点は、経営計画書と補助事業計画書を様式に沿ってきちんと書き分けることです。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)では、様式の名称も下記の通り、経営計画書と補助事業計画書と明らかに分かれているのですが、内容が整理/消化されないまま混在している申請書も少なくなりません。
計画書と補助事業計画書の一番の違いは、時間軸です。
経営計画は、過去の取り組みを踏まえた現在から3年~5年後を見据えた中期の計画です。
それに対し、補助事業計画は、補助金の趣旨(販路開拓やものづくりなど)に沿った申請(準備)から補助事業完了(評価)までの半年ほどの活動計画です。
時間軸の長さが違っていますので、当然、取り組む内容の具体性や目標値設定の精度などはおのずと変わってきます。
時間軸の違いを意識するだけでも、申請書が採択される可能性は高まります。
(様式2)経営計画書
1.企業概要 ・基本情報・沿革・提供商品/サービス・お客様・業績の動向など・ |
2.顧客ニーズと市場の動向 外部環境分析(機会、脅威)現在のお客様の状況、将来のお客様の状況など |
3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み 内部環境分析(強み、弱み)3P分析、3C分析など |
4.平成30年7月豪雨による被害からの事業再建に向けた経営方針と今後のプラン ・経営方針・目標とする経営指標・中期アクションプラン・体制/スケジュール |
(様式3-1:単独1事業者による申請の場合)補助事業計画
1.補助事業で行う事業名【必須記入】(30文字以内で記入すること)
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2.事業再建に向けた販路開拓の取組内容【必須記入】 これからの半年をイメージした取り組み内容・体制/スケジュール・実現可能性 |
3.補助事業の効果【必須記入】 ・定量指標(財務会計/管理会計)・定性指標(お客様、地域、自社の視点)など |
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の申請は、時間との戦いや、補助金申請特有の必要書類や、申請書作成が必要です。
対象となる方であっても、申請書作成や、事業計画の内容が不十分であれば、補助金を獲得することは難しくなります。しかし、慣れていない経営者や、従業員の方には難しい点も多々あるでしょう。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)の申請は「アステップ・コンサルティング」にご相談下さい。
要件充足の可否や、計画・申請書作成など、基礎からお手伝いをさせて頂きます。
被災地域販路開拓支援事業(小規模事業者持続化補助)は被災にあった事業者が対象となる補助金であり、比較的採択率が高いのが特徴です。
補助金の金額も最大200万円、補助率も3分の2と条件も良いと言えるでしょう。
そのため、対象となる事業者であれば、是非とも、積極的に活用して頂きたい補助金です。
しかし、申請にあたっては、商工会議所への申請書の確認依頼が必要となるなど、時間の余裕を持った準備が大切です。申請を希望される方は、早めにご相談下さい。
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