ものづくり補助金は設備投資に対して最大3分の2を補助してもらえるため中小事業者に非常に人気が高い補助金制度です。
2021年現在、年に4回程度公募が行われていますが、第6次募集では4,980件もの募集がありました。
しかし、経営者のなかには、ものづくり補助金に申請したいが財務内容が良くない(債務超過や資本金が少ないなど)や、赤字のため、審査に通る見込みがあるのか不安という方も多いようです。
また、ものづくり補助金申請に必要な中期経営計画の作成方法が解らないという経営者も多いようです。
今回は以下の疑問にお答えすることを目的としてご説明を行います。
また、赤字や財務状況が芳しくない場合に、ものづくり補助金の採択を受けるための方法も詳しく説明します。
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Contents
ものづくり補助金は、正式な名称を「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」といい、
「中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金」です。
補助上限額は1,000万または3,000万円で補助率は原則1/2または2/3と手厚い補助を受けられるのが特長です。
最初にものづくり補助金の公募要領で示されている審査基準から確認しておきましょう。
公募要領を読むと、ものづくり補助金の審査項目として
「補助事業実施のための社内外の体制(人材、事務処理能力、専門的知見等)や最近の財務状況等から、補助事業を適切に遂行できると期待できるか。
金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか」
という記載があります。
このことから、財務状況に関する審査があり、財務状況が採択・非採択に影響するのは間違いないと考えてよいでしょう。
それでは、なぜ、財務状況が審査に影響するのでしょうか?
また、財務状況はどのぐらい審査に影響するのでしょうか。
以下で見ていきましょう。
ものづくり補助金の補助率は1/2または2/3であり、補助事業にかかる経費などを全額補助してくれるものではありません。
また補助金額にも上限があり、1,000万または3,000万円が限度となっています。
つまり、対象事業にかかる費用が2,000万で、補助率1/2・上限いっぱいの1,000万円の補助を受けたとしても残りの1,000万は自己資金や金融機関からの融資で賄う必要があります。
それに見合う資金力または融資を受けられる見込みがないと、せっかく税金から補助するとしても、事業の遂行ができない可能性があり、税金が無駄になってしまうと考えられてしまいます。
そのため、資金力が低い事業者は採択から漏れてしまう可能性があるのです。
この時、銀行からの資金調達能力が低いと判断される財務内容とは、債務超過や、過小資本、赤字などと考えられます。
採択されればすぐに補助金が支払われるわけではなく、ものづくり補助金は原則として補助対象事業が完了した後に支払われます。
それまでは補助金でまかなわれる予定の費用も自己資金や金融機関から調達して支払っておかなければいけません。
資金繰りが悪化している事業者の場合、補助金を受け取るまでに資金繰りが破綻してしまう可能性もありますので、こういった事業者も、先ほどと同じく事業遂行能力が低いと判断されてしまいます。
この点でも、財務状況が事業遂行に十分であることが必要とされます。
ものづくり補助金はそもそも、既存の中小企業の新たな取組みを補助する制度です。
長期に渡ってほとんど売上がない会社は補助金受給目当てのペーパーカンパニーとみなされる事があり、採択されにくくなる可能性があります。
また、実際に営業を行っている会社であっても、売上が発生しない会社の場合は会社存続に対しての不安も持たれやすいですので、その分、審査に通りにくくなってしまいます。
財務状況を確かめるために、ものづくり補助金の申請には直近2期分の決算書(個人事業主の場合は確定申告書)を添付しなければなりません。
例えば「持続化補助金」では1期分の決算書しか求められないことと比べて、厳格に財務状況を審査されることが分かります。
公募要領には
『中小企業の会計に関する基本要領』又は『中小企業の会計に関する指針』に拠った信頼性のある計算書類等の作成及び活用に努めてください(
との記述があります。
提出する決算書は税理士など有資格の第三者によって作成され、「『中小企業の会計に関する基本要領』の適用に関するチェックリスト 」等が添付されていることが望ましいということになります。
ここまでご説明した通り、ものづくり補助金の審査には財務内容や利益の状況(赤字、黒字など)は影響すると考えられますが、実際に提出した決算書のどのような点が採択・非採択に影響するのでしょうか?
残念ながら、ものづくり補助金の詳細な審査項目や配点などは公表されていないため、詳細な点は解りません。
しかし、前述の通り、審査で確認している項目は判明していますので、ある程度推測することは可能です。
ものづくり補助金の公募要領には、「補助事業を適切に遂行できると期待できるか。金融機関等からの十分な資金の調達が見込まれるか」と記載されていますので、この部分を満たせることが求められます。
決算書で採択に強く影響すると考えられる点をあげてみましょう。
どのような決算書が補助金採択に不利にはたらくのか見ていきましょう。
例を示し、なぜ不利なのかを分析していきますが、審査の過程は分からないため推測を交えます。その点ご留意下さい。
債務超過とは、貸借対照表で総資産より総負債が大きい状態をいいます。
簡単に言うと債務超過の企業は支払い能力が不足していると考えられます。
債務超過になると自己資金が不足しており、かつ融資も受けにくくなりますので、資金調達力は低いと判断されます。
そのため、直近の決算書で債務超過になっていると、ものづくり補助金の採択には不利になる可能性が高くなります。
提出する2期分の決算書がどちらも赤字だと、採択の可能性が低くなると言われています。要因として考えられるのは、
といったことがあります。
キャッシュフローは利益と似ていますが、厳密には「現預金がいくら増えたか(減ったか)」を示す指標です。
特に中小企業にとっては営業利益以上に意味をもつ場合があります。
損益計算書での数字上の利益よりも「いくら自由に使えるお金が増えたか(減ったか)」が重視される場面も経営上多くあるからです。
もし、仮に営業利益が赤字であっても、赤字の要因が減価償却費であり、CFベースで考えると十分に黒字であると評価できるのであれば、審査でもマイナス評価は受けにくくなります。
財務状況をチェックする際にはキャッシュフローを必ず確認するようにしましょう。
決算書にキャッシュフロー計算書を添付していなくても、提出した2期分の決算書から審査担当者が計算できます。
現在のキャッシュフローから補助事業開始後のキャッシュフローを推計することもできます。
その結果、事業資金が保てないと判断される可能性がありますので、キャッシュフロー面からも健全な経営を維持していないと、ものづくり補助金の採択で不利になることもあり得るでしょう。
ものづくり補助金の採択に有利な決算内容は、上記に示した不利な例の逆となります。つまり、
といった条件を満たしていれば、ものづくり補助金の採択可能性が高まります。
これまで見てきたように、赤字や、債務超過の会社はものづくり補助金の採択に不利になる傾向があります。
しかし、絶対に採択されないというわけではありません。
不利な条件を抱えていても採択されるための方法を解説します。
補助金申請時に添付するのは過去の決算書だけではありません。
もっとも重要視されるのは「事業計画書」です。
そもそも、これまでの実績は過去のことであり申請時に変える事ができません。
過去は変える事ができませんが、今後の利益が増加していくような事業計画書を作成することは可能です。
しかし、いくら利益が増える計画になっていても、ただの数値上の計算に過ぎず、実現可能性が高く、根拠を伴った事業計画書でなければ意味がありません。
そして、事業計画の実現可能性が高いと判断されるためには、以下の点を重視する必要があります。
リアリティのある事業計画が策定できれば、財務状況が望ましくなくとも、ものづくり補助金に採択される可能性は十分にあります。
事業の実現可能性(リアリティ)はもっとも重要なのですが、それ以前に前提条件として事業計画書でクリアしなければならない項目があります。
ものづくり補助金では、付加価値額の増加目標や、給与支給総額の増加目標などが定められており、この目標をクリアしなければ、そもそも審査基準に達していないことになります。
最低限の要件はクリアすることを念頭において計画を作成しましょう。
事業計画で最も重要視されるのは、ものづくり補助金の趣旨からみて「事業の革新性」です。
革新性とはこれまでにない商品やサービス、また提供方法・生産方法を開発するということを指しています。
また、自社にとって既存の商品・サービスなどでないことはもちろん、他社でも一般的ではないものであることが望まれます。
そのため、ものづくり補助金に申請する事業者にとって新しい取り組みであっても、既に同業他社などで一般的になっている取組みなどは対象にならないこともあります
なお、革新性があっても十分な収益が得られることが予定できない計画では補助金はもらえないことにも注意しましょう。
つまり、「対象事業の革新性」と同程度もしくはそれ以上に、「事業の収益性」も問われます。
ものづくり補助金では事業の収益性を事業計画書で示すことが大切です。
収益性とは、その事業による利益がどの程度得られるのかということです。
では、どの程度の収益性を、どうやって示せばよいのか以下で詳しく見ていくことにします。
ものづくり補助金の公募要領には、応募に必要な条件として次のものが挙げられています。
ものづくり補助金に申請する際の事業計画書では最低これらの条件を満たす収益計画を作成できなければいけません。
ここでいう付加価値額は、営業利益に人件費と減価償却費を加えて算出します。
ものづくり補助金の審査では事業の費用対効果が優れているかどうかがチェックされます。
費用対効果とは、補助事業での投資金額に対してどの程度の利益が見込めるかということです。
費用対効果が高い事業であることを分かりやすく示すために、3~5年分の収益計画表を作成します。
具体的には、下記の様な表を作ります。
No |
項目 |
計算式 |
(単位) |
1年後 |
2年後 |
3年後 |
1 |
補助事業の収益効果合計 |
2+5 |
(千円) |
7,500 |
13,500 |
15,000 |
2 |
生産設備導入による外注コスト削減 |
3-4 |
(千円) |
500 |
1,000 |
1,000 |
3 |
外注費削減額 |
(千円) |
1,000 |
2,000 |
2,000 |
|
4 |
新規設備による加工費増加 |
(千円) |
500 |
1,000 |
1,000 |
|
5 |
生産量増加による利益の増加 |
6-9 |
(千円) |
7,000 |
10,500 |
14,000 |
6 |
売上高 |
7×8 |
(千円) |
10,000 |
15,000 |
20,000 |
7 |
単価 |
(円) |
1,000 |
1,000 |
1,000 |
|
8 |
個数 |
(万個) |
1 |
1.5 |
2 |
|
9 |
材料費 |
6×10 |
(千円) |
3,000 |
4,500 |
6,000 |
10 |
原価率 |
(%) |
30 |
30 |
30 |
この表をみると、設備導入によってどのような増収が生じるのか、将来の増収がいくらになるのかがひと目で分かります。
上のような表だけでは説得力がありません。
収益計画が現実的なものであることを示すためには、売上の増加率、経費の削減率などを支える具体的・客観的な根拠を付記する必要があります。
裏付けのない数字だけの事業計画は採択に有利な影響を与えません。
また都合の良い金額を記載して根拠を後付けするような作成方法ではどこかに穴のある計画書になってしまいます。
目標を設定するにも、客観的な事実からスタートして金額を定めるようにしましょう。
ものづくり補助金で採択されるためには、加点項目にできるだけ多く対応することも必要です。
2021年現在、加点項目として認められているものには、「経営革新計画」と「事業継続力強化計画」の2つがあげられます。
これらは、申請に手間はかかりますが、しっかりと対応することで、その分、ものづくり補助金の審査にも通りやすくなります。
なお、2021年の7次公募から、経営革新契約や事業継続力強化計画は「申請中」での加点が認められず、認定を受けたものだけが加点扱いとなるように変更となりました。
そのため、加点を狙うのであれば、早めに対応しなくてはいけません。
財務状況に問題があっても、現実的で収益性の高い事業計画をさくていすれば採択の可能性はある。
決算書の内容が思わしくない場合でも、事業計画書を上手に作成することでものづくり補助金の採択可能性を高めることが可能です。
ものづくり補助金を受給できるよう、適切に要件を満たした客観的な事業計画書を作成しましょう。
精度の高い事業計画書を作成することは、補助金の採択のためだけでなく、事業の成功可能性も高めてくれます。
心に描く事業を形にするためにも本記事を参考に正しい事業計画書を作るようにしてください。
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