ものづくり補助金とは、中小企業者向けの1,000万円の補助金を受け取ることができる制度ですが、その名称から製造業等、ものづくりに取り組む事業者のみを対象とした補助金と誤解されることも多いようです。
しかし、ものづくり補助金は幅広い業種を対象としたもので、製造業だけではなく、小売業や卸売業、さらにはサービス業まで対象として受け取れる補助金です。
ところが、やはり製造業が利用しやすい申請内容でもあるので、サービス業の方が申請するには注意が必要です。
サービス業などでものづくり補助金を受け取るための条件やポイントを解説いたします。
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ものづくり補助金の対象となる方の条件は下記の3つです。
サービス業であっても、条件を満たしていればものづくり補助金を受け取ることができますので、それぞれ見てみるとしましょう。
既に創業している会社であることが大前提になります。
補助金の中には、「これから創業する」という形式であっても受けられるものがありますが、ものづくり補助金に関しては、既に開業していることが必要です。
そのため法人であれば設立済みであり、個人であっても事業開始していることが条件です。
また、サービス業の方であれば、サービス業として経済活動を行っていなければならないということです。
これから事業を開始するので、そのための資金として活用したいという方は対象になりません。
加えて、会社組織だけではなく工場や店舗を既に保有してなければなりません(賃借でも可能です)。
これらは詳しくは後述しますが、試作品開発や生産性の向上を目指すものになりますので、「これから会社を立ち上げます」「これから向上を確保します」では、残念ながら対象外です。
ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者向けの補助金になりますので、資本金や従業員数も、規定値以下でなければなりません。
つまり、業種ではなく規模による制限が設けられており、サービス業であっても規準を満たすことでものづくり補助金を受け取ることができます。
なお、ものづくり補助金の対象となる規定値は以下となります。
業種 |
資本金 |
従業員数 |
製造業、建設業、運輸業 ソフトウェア業または情報処理サービス業 その他 |
3億円以下 |
300人以下 |
ゴム製品製造業 |
3億円以下 |
900人以下 |
卸売業 |
1億円以下 |
100人以下 |
旅館業 |
5,000万円以下 |
200人以下 |
その他サービス業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
ここでポイントとなるのが、資本金、従業員数の双方ではなく、いずれかを満たせば良い点です。
例えば資本金が2億円の卸売業者でも、従業員が100人以下であればものづくり補助金の申し込みが可能です。
また、サービス業の場合、資本金が5,000万円以下、もしくは従業員数が100人以下である必要があります。
この従業員数にはパート、アルバイトなども含まれます。
飲食店などを行っているサービス業の場合、店舗スタッフなどの人数が多くなることがありますので、こういった中小企業要件に該当しているのかは良く確認しておきましょう。
ものづくり補助金を申し込む時点で、賃金の引上げ計画を従業員に対し、公表・アナウンスしていなければなりません。
ちなみに賃上げ計画は、下記の3つすべてを満たす必要があります。
上記の内容を、補助金事務局が指定する「賃上げ計画の表明書」として作成し、提出する必要があります。
パート・アルバイトで雇用している方は時給、正社員(固定給など)であれば時間あたりの給与で判断します。
また、表明書には従業員代表者の押印が必要になります。
つまり、従業員に無断で提出することはできないことを意味します。
しかし、従業員がいない場合に関しては「今後雇う」という形式でも構いません。
ですので、まだ従業員を雇っていないサービス業者であっても、ものづくり補助金に申請することは可能です。
これらを満たしていればサービス業であっても申請に何ら問題ありません。
ちなみに令和2年のものづくり補助金の募集から、認定支援機関の印鑑が不要となりました。
不要になったことで、ハードルが下がったと見る人もいるのですが、むしろ印鑑の代わりに「賃金引き上げ計画の表明書」の精度が問われるようになりました。
そのため、認定支援機関など、専門家からのアドバイスが不可欠だと考えた方が良いでしょう。
ものづくり補助金の金額は、補助対象によって異なります。
補助対象は3種類用意されていますので、それぞれどのような補助なのかなど、金額を含めた特徴についてご紹介しましょう。
新しい製品やサービスの開発、あるいはその生産方法やサービスの改善につながる設備やシステム導入を補助するための補助金です。
補助金の上限額や、補助率は業種間での差はなく、申請者の規模や取組み内容(低感染リスク型ビジネス枠に該当するか否か)で決まります。
事業規模 |
補助率 |
中小企業 |
2分の1 |
小規模事業者 |
3分の2 |
低感染リスク型ビジネス枠 |
3分の2 |
上記の利率となっています。
補助金額は、1,000万円以内となっていますが機械装置、システム構築費以外の経費に関しては500万円以内となっています。
また、補助対象の経費ですが機械装置やシステム構築費に関しては1つに付き税抜きで50万円以上の設備投資が必須です。
他には技術導入費、運搬費、専門家経費、クラウド利用費が該当します。
これらの数字から、具体例を出してみましょう。
例えば中小企業が2,000万円経費を使用したとします。
この場合、まず補助率が2分の1になりますので2,000万円の2分の1である1,000万円となり、上限である1,000万円の範囲内に収まっていますので全額受け取ることができます。
しかし2400万円だった場合、2分の1だと1,200万円になりますので、この場合は上限の1,000万円までしかうけとることはできません。
小規模事業者や低感染リスク型ビジネス枠の場合は3分の2になりますので、1500万円経費として使用した場合、1,000万円受け取ることができます。
これらはあくまでも会社の規模によって分類されるものであり、業種の如何ではありません。
つまり、サービス業であっても既定の条件を満たしていれば、ものづくり補助金を受け取ることが可能です。
まずは利率です。
一般型と同じですが、低感染リスク型ビジネス枠がありません。
事業規模 |
補助率 |
中小企業 |
2分の1 |
小規模事業者 |
3分の2 |
また、補助金額は3,000万円以内ですが、機械装置とシステム構築費以外の経費に関しては1,000万円以内です。
補助対象経費は機械装置とシステム構築費に関しては1つ税抜き50万円以上、他には技術導入費、運搬費、専門家経費、クラウド利用費等、基本的に一般型と似ている点があるのですが、グローバル展開型の場合、海外旅費も補助対象となります。
サービス業であっても、海外を参入するのであれば、十分に対象に入ります。
ビジネスモデル構築型は中小企業を支援する大企業を対象としたものです。
補助上限も最大で1億円と高額ではありますがあくまでも大企業を対象としたものです。
補助対象経費も機械装置やシステム構築費だけではなく、知的財産権関連経費、外注費、広報費、運搬費、謝金など、他の二つにはない項目も多数含まれています。
ものづくり補助金には注意点があります。
それは対象外になる経費がある点です。この点はサービス業や他の業種で違いはありません。
いずれの業種に於いても品目はもちろんですが、タイミングも大切です。
大前提として、交付決定日前の発注や購入、契約したシステム等については、対象品目ではあっても対象外となってしまいますので覚えておきましょう。
ものづくり補助金は、対象外とならない経費もありますので注意が必要です。
例えば専門家経費を見ると、謝金、旅費、委員会移嘱料、技術指導料に関しては補助対象ですが、補助事業に関係ない謝金や旅費、技術導入費、外注加工費、事業計画書作成料は補助対象外です。
クラウドサービス利用費も、専用アプリケーションマニュアル制作費や月々の利用料といった費用は補助対象ですが、補助事業以外にも使用が可能なパソコンやタブレット、スマホに関しては対象外です。
このように、様々なジャンルに於いて補助対象と補助対象外品目が細かく設定されています。
また、役員報酬、給与手当、敷金礼金、事務所家賃、駐車場や珍、消耗品費、通信費、水道光熱費、接待交際費、会議費、税理士費用、弁護士費用、支払い利息はすべて対象外です。
サービス業の場合、店舗の敷金や礼金、賃料、内装工事なども補助してもらいたいと考えてしまいがちですが、残念ながら対象外です。
ものづくり補助金は電子申請のみとなっています。
まだまだWEB環境を導入していないサービス業者の場合、少々ハードルが高いのですが、さらに「Gビズ」という別のサイトでIDを取得しておく必要があります。
また、GビズIDを取得するためには書類を提出する必要があるので、最短でも2週間程度は見ておいた方が良いでしょう。不備があれば再提出を求められますので、さらに時間がかかります。
ものづくり補助金の申し込みを考えているのであれば、時間に余裕をもって早めに動いた方が良いでしょう。
繰り返しになりますが、ものづくり補助金はサービス業であっても問題ありません。
大切な点は、サービス業か否かではなく、条件に合致しているかです。
そこでサービス業がものづくり補助金を受け取るためのポイントについて以下の点を抑えておきましょう。
ものづくり補助金に申請するためには、様々な要件が定められており、それぞれを満たすことを確認しておかないといけません。
せっかく申請しても、条件にあっていないと審査の土台にも乗ることができません。
そのため、条件を正確に把握しておきましょう。
ものづくり補助金の条件を見ても分かるように、補助金を受け取るためのフローは少々難易度が高いです。
自らのリソースだけで補助金を受け取るとなれば、情報収集、知識の研鑽、そして書類作成等、すべきことが多々あります。
そこで、ものづくり補助金の申請に慣れたコンサルタントを活用するのも良いでしょう。
特に、これまでにもサービス業者の手助けをしたことのある業者であれば、ノウハウを持っているので、採択されて、ものづくり補助金を受け取れる可能性が高まります。
ものづくり補助金の審査でもっとも重要視されるのは「革新性」だと言われています。
革新性とは、目新しさや、新規性といったもので、同業他社において広く普及していない取組みであることが求められます。
そのため、どのよう点が業界内で革新性があり、どこが同業他社と差別化しているのかはしっかりと説明する必要があります。
なお、同業他社で広く普及していないければ、必ずしもオンリーワンの取り組みである必要はありません。
ものづくり補助金では、事業計画の内容をもとに審査されます。
そのため、客観的に見て、成功すると予想できる事業計画は採択されやすく、実現可能性が低いと思われる事業計画は採択されにくくなります。
こういった判断基準の1つになるのが、販路開拓の施策です。
せっかく開発した新サービス、新役務も、実際に利用者に購入してもらえなければ意味がありません。
どのように利用者に購入してもらうのかといった施策を考えておくことが大切です。
ものづくり補助金をその名称から、製造業向けの補助金だと思っている人も多いようですが、サービス業や小売業など、様々な業種を対象にした補助金です。
「ものづくり」という言葉に影響されて、「対象外だ」と判断するのではなく、補助金の対象なのか、対象であればどのような流れで申し込むのかなどを確認しておきましょう。
しかしこれらは自らだけでとなると決して簡単ではありませんので、専門業者に依頼することも選択肢に入れておくとよいでしょう。
特にこれまでサービス業にてものづくり補助金を受け取った実績のある業者であれば、心強い存在になってくれるはずです。
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