飲食店開業時、オープンの1か月前にはスタッフ(従業員)募集を開始し、2週間前までに必要な人材採用を済ませて、必要な人員を確保しておくことが望まれます。
そして、研修を行い、万全の態勢で開店の日を迎えるようにしたいものです。
飲食店にとって、オープニングスタッフは「お店の顔」となる重要な存在です。お店の雰囲気や、コンセプトにも繋がる重要な存在ですので、募集から採用までは慎重に判断しなければなりません。
そこで今回は、飲食業開業時に経営者が知っておくべき、より優秀な人材をオープニングスタッフとして採用するための方法について見ていきましょう。
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飲食店のオープニングスタッフは、働く従業員にとっては、全員が同じスタートラインに立って仕事をすることになりますから、先輩・後輩の上下関係がなく、経験者・未経験者の差もないので働きやすいというメリットがあります。
これはスタッフ側にとってのメリットですが、雇用する側にも次のようなメリットがあります。
◆スタッフ全員がゼロからのスタートなので指導しやすい。
◆ハウスルール(勤務態度や身だしなみなど、そのお店独自の規則)をスタッフの意見を聞き入れながら作成し、働きやすい環境づくりができる。
◆研修期間などを通してスタッフ同士に仲間意識が生まれ、チームワーク力が高まる。
ほかにもメリットはありますが、最大のメリットは経営者・従業員全体のチームワーク力が高まる点です。
チームワークスキルが身に着くと、「仕事だからやらなくては」という個の成果を目指す思考から、「お店のためにやろう」という共同体としての成果を目指す思考に変わります。
それはやがて、「お客様に喜んでもらうためにやろう」という、サービス業の本質であり、飲食店にとって重要なホスピタリティ精神(おもてなしの心)を培うことにつながります。
飲食店はスタッフと共に成長していくといわれるように、チームワーク力は、飲食店を成長させるための重要なカギであり、繁盛店に導くために欠くことのできない要素なのです。
募集する人材は、お店の規模によって異なりますが、一般的には正社員(店長候補、料理長)とアルバイト(ホールスタッフとキッチンスタッフ)の2通りです。それぞれ雇用形態の違いをあげてみましょう。
正社員として雇用する場合
経営者自身が店長も料理長も兼ねる場合は、正社員は必要ないと考えがちですが、将来、事業拡大することを視野に入れているのであれば、店長候補として採用し、早いうちから店長教育をしていく必要があります。
店舗が軌道に乗り、2店舗目、3店舗目と展開していくなら、お店を任せられる方を育てておく必要があります。
〈賃金・待遇〉
正社員は、「無期限雇用」が原則で、賃金は基本給+諸手当、年1~2回の賞与、年1回の昇給、有給休暇、交通費、退職金を支給するのが一般的です。
これらは法的に義務づけられているものではありませんが、有能な人材を採用して定着させるためには必要不可欠といえるでしょう。そのため、アルバイト・パートに比べ、雇う側の費用は高くなってします。
〈社会保険〉
正社員を雇用する際は、社会保険(健康保険と厚生年金保険)に加入することになりますが、個人経営の飲食店の場合は、社会保険の加入は強制ではなく任意です。
しかし、求人募集の広告に「社会保険完備」と記載することで優秀な人材が集まりやすいため、個人経営でも社会保険に加入する事業主が増えています。保険料は、事業主と社員本人が半額ずつ負担することになります。
〈労働保険〉
労働保険(労災保険と雇用保険)は、法人か個人経営かを問わず、社員を一人でも雇用すれば加入が義務づけられます。保険料は、労災保険は事業主が全額を負担し、雇用保険は事業主と社員本人が半額ずつ負担します。
なお、一旦、アルバイト・パートとして雇用した後、後日、正社員として職種転換することも可能です。その際に活用できる助成金もありますので、知っておかれるのが良いでしょう
アルバイトで雇用する場合
アルバイトは、昼のランチタイムだけ、夕方からのディナータイムだけというように忙しい時間帯の4~6時間だけ働いてもらう短時間労働者です。費用が少なく済んだり、必要な時間だけ働いてもらうことができるというメリットがあります。
一方、正社員として勤務してもらう方に比べ、就業が固定しにくかったり、勤務意欲などが低くなってしまう可能性もあります。
〈賃金・待遇〉
アルバイトの時給を設定するときは、同じエリアの求人情報誌やwebサイトで、他店がどれくらい支給しているか時給相場をチェックしてみましょう。
相場を考慮せずに「うちの仕事は楽だから」などと時給を安く設定すると、応募する人がいないだけでなく、法律で定められた「最低賃金法」に違反して罰金を科せられることがあります。
最低賃金額は、都道府県ごとに定められるもので地域差があります。「最低賃金」で検索して、最低賃金を上回る金額に設定するようにしましょう。ちなみに、2018年現在の最低賃金は、東京が958円、大阪が909円、福岡が789円で、これだけの地域差があります。
〈社会保険〉
健康保険と厚生年金保険は、アルバイトでも一定基準を満たす場合は加入することができます。
〈労働保険〉
労災保険は勤務日数がたとえ週1日でも加入が義務づけられます。雇用保険は、昼間部学生や65歳以上の人を除くアルバイトは加入対象となります。
社員とアルバイトの違いを理解したところで、自分の店にはどのような人材が何人必要か、どのような業務をスタッフにお願いしたいのかを書き出してみましょう。
年齢、性別、属性(主婦か学生かなど)、経験の有無などを明確にし、希望するスタッフのイメージをある程度固めておかないと、採用した後でミスマッチが生じて、結局時間とコストを無駄にしてしまうことがありますからこの作業は大切です。
採用する人数や賃金、加入する保険などを決めたら、スタッフの募集広告を出します。
求人媒体は数多くの種類があり、それぞれに学生向け、飲食店スタッフ向け、専門職向けなど、得意とする領域がありますから、採用したい人材に合わせて最も効率のよい媒体を選ぶようにしましょう。
インターネットの求人サイト
インターネットが身近なツールになった現代は、web求人サイトで仕事を探す方法が主流になってきています。
Webサイトを通じた求人広告は、募集要項だけでなく、店内の雰囲気や経営者の写真など多量の情報を掲載できる点がメリットです。掲載料金は、アルバイトの場合は1週間掲載で2万円前後です。正社員は長期間の掲載が望ましいため4週間掲載で20万円前後が多いようです。
フリーペーパー
駅やコンビニなどに置かれている無料の求人情報誌で、若年層を募集したいときに有効です。
掲載料金は最小枠で2万円前後、1ページ全体で40万円前後です。エリアによって料金は異なり、部数が多くなる都市部ほど割高になります。
ポスティング・折り込みチラシ
郵便受けに投入するポスティングや新聞の折り込みチラシを活用した求人広告は、近所の主婦を募集したいときに適しています。ポスティングの費用は、配布エリアや配布方法によって異なりますが安価な点がメリットです。折り込みチラシはデザイン、印刷、折り込み料で計80,000円前後が相場です。
人材紹介サービス
人材紹介会社に登録している求職者の中から、希望する人材を紹介してもらうシステムで、店長候補や料理長など正社員・契約社員・幹部クラスの人材を募集するときに適しています。
料金は「成果報酬型」で、採用が決定した時点で紹介料が発生します。料金は採用した社員の年収の20~35%が相場とされています。その社員が短期間で辞めてしまった場合は、紹介料は返還されることになっています。
ハローワーク
店舗がある住所を管轄するハローワークの窓口で、「事業所登録シート」と「求人申込書」を提出します。
提出した申込書は、ハローワーク内に設置された検索端末機で公開されます。希望すれば「ハローワークインターネットサービス」を利用することができます。
ハローワークのメリットは、無料で利用できることと、要件を満たせば助成金を受けられることです。
飲食店が活用できる助成金の1つに「キャリアアップ助成金(正社員化コース)」があります。これはアルバイトで雇用し、一定期間を経過したあと正社員に転換すると支給されるものです。
飲食店開業時のように、創業時は特に助成金・補助金の存在が重要です。当初の資金繰りを楽にしてくれる制度ですので最大限活用したいところです。キャリアアップ助成金(正社員化コース)を始め、活用できる可能性のある助成金・補助金については、アステップ・コンサルティングにご相談下さい。
▼キャリアアップ助成金はこちらで解説しています
飲食店開業時のスタッフ採用面接では、第一印象でおおまかな人物評価を行います。
ベテランの面接者が飲食店従業員を最初にチェックするのは、顔の表情、声の出し方、身なりの3点だといいます。明るく、はきはきしていて、清潔感のある人は素直で意欲的な性格の表れで、いずれリーダー的存在になる人材と評価することができます。
それに対して、アルバイト慣れした感じのする人は、チームワークを乱す存在になりやすく、長続きする可能性は低いと判断していいでしょう。
ただし、第一印象が悪いからとすぐに面接を切り上げたりしないで、最後まで礼を尽くすことが大切です。面接はこちらが評価しているだけでなく、応募者も同じように面接者を評価しているからです。あまり冷淡な扱いをすると、よくない風評を立てられることがあるので気をつけなければなりません。
飲食店開業であっても、サービスが目新しい場合や、これまでに無かった新規性を伴うなら、創業補助金(地域創造的起業補助金)の活用も検討されてみてはいかがでしょうか。
新規開業時は、その後の運転資金も考慮するとお金が必要です。一部でも補助金・助成金が得られるなら有効活用すべきです。創業補助金では、新規開業する経営者を対象として、最大200万円までの補助金を得られる可能性があります。
▼創業補助金を最大限活用する方法
また、補助金だけでなく、日本政策金融公庫から新創業融資制度を活用して、資金調達することも検討できます。
新規開業だけでなく、補助金申請、資金調達など、アステップ・コンサルティングでは、開業時のサポートを行っています。まずは、アステップ・コンサルティングにご相談下さい。
求人広告を出したのにほとんど反響がないという場合があります。
そのようなときは、求職者と自分の間にズレがないか見直してみる必要があります。求職者が選択基準としているのは、時給や有給休暇といった待遇面とは限りません。最近は、経営理念やコンセプトといった企業イメージを重視する傾向が強まっているといわれます。
経営者自身がどんなお店を、だれのために作りたいのかという経営理念を打ち出し、それをしっかり伝えて理解してもらうことが必要です。広告にどのように書けばいいか迷った時や、スタッフをどれだけ活用して事業を行うべきなのかに悩まれた時などは、アステップ・コンサルティングにご相談下さい。
▼ご相談はこちら
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