ものづくり補助金のご相談を受ける際に、「過去にものづくり補助金を受けたことがあるけど、再度申請することはできますか?2度目は採択されにくいですか?」といったものがあります。
確かに、2度目以降のものづくり補助金を活用する場合、知っておくべきポイントがあります。
今回は、ものづくり補助金を2回以上受け取る場合の注意点や可否について説明します。
Contents
結論から申し上げると、ものづくり補助金は2度目でも、3度目でも利用可能です。ものづくり補助金を利用できる回数に上限や制限といったものは設けられていません。
そのため、2度、3度と言わず、4~5度といった回数で、ものづくり補助金を受けたことがある強者もいます。
準備の良い中小企業経営者の方であれば、段取り良く「経営革新計画」の認定を定期的に受けておき、その計画期間内に、ものづくり補助金の申請を行っている方もいらっしゃいます。ものづくり補助金は中小事業者が利用できる最大規模の補助金ですし、設備投資に使えるものですので、積極的に活用していただくのがおすすめです。
しかし、注意しておきたいこともあります。
それは、過去にものづくり補助金を採択された方の場合、審査で不利な扱いを受けることもあるという点です。
2020年現在で実施されている公募要領(令和元年度・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)には以下のような記載が設けられています。
公募要領であげられる「類似の補助金」とは、ものづくり補助金のことを指します。その他の中小企業庁が実施する補助金(小規模事業者持続化補助金やIT導入補助金など)を受けていても減点になるのかと心配される方もいますが、それらの補助金とは無関係です。
ものづくり補助金は年度ごとに名称が変わり、多少の修正が加えられて実施されています。
そのため、過去のものづくり補助金が現在と同一名称でないことからこのような記載になったと考えられます。
この減点項目としての記載の通り、過去3年以内にものづくり補助金で交付決定を受けた方は減点、つまり審査でやや不利な評価を受けるということが明確化されています。
加えて、その「交付決定の回数に応じて」と説明されていますので、ものづくり補助金を利用した回数が多いほど、減点ポイントも大きくなることが解ります。
しかしながら、ここでは3年以内のものづくり補助金の利用がマイナス対象とされていますので、言い換えれば4年以上前にものづくり補助金を受けていても、減点対象にはならないということが解ります。
3年超の時間が空いた事業者であれば、特段の心配や懸念なく、ものづくり補助金に申請頂くことができます。
もちろん、複数回目の利用であっても、審査において減点などの対象にもなりません。
それでは、この3年以内に、ものづくり補助金で交付決定を受けていた場合の減点とは、どの程度審査に不利になるということでしょうか。
残念ながら、ものづくり補助金では各審査項目の採点などは明確にされていません。そのため、3年以内の交付決定に該当することでの減点ポイントや程度は明確ではありません。
ただし、あくまで加点項目や減点項目というのは審査のごく一部に過ぎません。
もちろん、減点の無い事業者に比べ、減点のある事業者は採択されにくくなるでしょう。しかし、それはわずかな差であると考えられます。
なぜなら、ものづくり補助金の審査の大部分は事業計画書に対して行われるからです。事業計画書をしっかりと作成すれば、これらの減点などは十分にカバーできると考えます。
3年以内にものづくり補助金を利用したことがあって減点されたからと言って、それで採択される見込みが無くなるということでは全くありません。
実際、弊所で申請をサポートしている事業者様において、1年前と3年前にものづくり補助金を受けていましたが、今期申請して無事に採択された方がいます。
また、前年に続き、2年連続で採択された事業者様もいます。
公募要領に記載されることは事実でしょうから、過去の採択実績は減点項目にはなっているでしょう。しかし、ものづくり補助金の審査の大部分は事業計画書の内容について行われます。また、減点となった部分を、加点項目で補うといったことも可能です。
そのため、過去に採択されていても、設備投資の予定があるのなら、ものづくり補助金に積極的に申請してみましょう。
ものづくり補助金への複数回の申請に関係することで、もう1点の注意があります。それは、以下の事業者については申請要件から除外されてしまい、申請が出来なくなってしまうということです。
平成24~29年度のものづくり・商業・サービス補助事業の採択事業者のうち、「事業化状況・知的財産権等報告書」を未提出の事業者
「事業化状況・知的財産権等報告書」とは、補助金を受領した後、5年間に渡って毎年報告が義務付けられる書類です。こちらの提出は補助金を利用した方の義務にあたるもので、申請時にも報告を行うことを約束しているものです。
にもかかわらず、「事業化状況・知的財産権等報告書」を提出していない事業者は、補助金で支援する必要がないと考えられているのでしょう。
既にものづくり補助金で採択されている方は、必ず漏れなく、「事業化状況・知的財産権等報告書」を提出するように注意してください。
また、ものづくり補助金を利用できるのは、同一年度内に1度のみです。2020年であれば、「令和元年度・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」に採択されて交付決定を受けた場合、この年度内で再度申請するということはできなくなります。
仮に、この交付決定を利用しないとして、事業の廃止を行っても同様です。一度交付決定を受けると再申請はできなくなります。
なお、もし申請していても不採択だった場合、再挑戦として申請することは可能です。採択されなかった方への制限や、審査においての減点措置などはございません。
良く似たご質問に、ものづくり補助金への申請を行う際、1件だけでなく、2件、3件を同時に申請することはできますかというものがあります。
つまり、複数の申請書を作成して、同時に実際申請するというわけです。
確かに、ものづくり補助金に申請しても「不採択」となる可能性はありますので、内容を変えて、同時に複数の申請を行っておけば、その分採択される可能性も高くなるのではないかと考えたのでしょう。
しかし、結論から言って、同時に複数の申請を行うことはできません。
1回の申請タイミング(締め切り)において、同一事業者が申請できるのは1件のみです。複数申請はNG行為になります。
なお、仮に代表者が同一でも、別法人であれば複数申請することは可能です。法人が異なれば、同一事業者ではありませんので、それぞれ1件の申請を行うことが可能です。
今回はものづくり補助金について、同一事業者が、複数回の申請を行う場合の審査に与える影響をご説明いたしました。
公募要領では、過去3年以内に交付決定を受けた事業者は減点対象となることが明確に記載されています。しかし、減点ではありますが、採択される見込みがないわけではありません。
実際、弊所がサポートする事業者では複数回の採択を無事に受けられています。審査の対象は事業計画書の内容が重要ですので、しっかりとした事業計画書を作成すれば十分に可能性はあると考えて良いでしょう。
関連記事
03-5859-5878受付10:00~18:00