セレックシステム(CEREC)は近年、歯科医院で導入が増えている3Dスキャナー・デジタル技術を活用した先端設備です。導入後の収益増・利益改善効果も高いということで人気が高まっています。
また、セレックシステムに限定せず、比較的近い3Dスキャナや歯科用CADCAM、3Dプリンターなども同様に導入される歯科医院が増加しています。
今回は政府が運営する「ものづくり補助機事業関連サイト」にて掲載されている事例をもとに、セレックシステムを導入する歯科医院の事例や、歯科医院の「ものづくり補助金」活用方法をご紹介します。
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セレックシステム(CEREC)とは、最新の3Dスキャナなどでのデジタル技術やCADCAMを活用して、歯の被せものや詰めものを製造する機械のことです。
歯科医院内で、3Dスキャナによって口腔内のデータを取得してデジタル画像化し、被せものや詰めもの(補綴物)をパソコンで設計、そのうえでミリングマシンと呼ばれる機械でセラミックブロックを削り出して製造することができます。
セレックシステムの最大の特徴は、セラミック、ジルコニア、CADCAM冠といった補綴物を歯科院内で製造できるようになることです。
これらの補綴物は「白い詰め物・被せ物」になり、審美性にも優れています。
従来、補綴物を歯科技工所に外注している歯科医院の場合、CERECシステムを導入することで、補綴物を院内で製造することができるようになります。また、セラミックなどの自由診療の対象となる治療も、原価を低く抑えて治療できる可能性があります。
また、外注が減少し、歯科医院内で補綴物を製造できるため、治療に要する時間を短縮化することも可能です。
CERECシステムはデジタル技術を活用した口腔内・歯型の採取となるため、取得するデータの精度が高く、出来あがりの補綴物も患者への適合性が高くなると言われています。
そのため、制作した補綴物による治療のやり直しが少なくなり、効率的な治療が可能となります。
院内での補綴物制作、治療時間の短縮といったメリットがあるCERECシステムですが、導入にあたっては数百万円規模の設備投資が必要になります。
そのため、導入するにあたって資金調達が必要になったり、設備投資額の大きさから導入を躊躇される歯科医院も多いでしょう。
そういった歯科医院の場合、必要投資額の一部を補助金でカバーされることをおすすめいたします。補助金は借入とは異なり、原則返済不要(収益納付は除く)の資金ですので、歯科医院の自己負担を軽減できます。手出しが少なくなりますので、設備投資に対するハードルも低下できます。
そして、歯科医院が活用できる補助金制度としておすすめなのが「ものづくり補助金」です。
ものづくり補助金は正式名称を「令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(2020年の場合)と言い、中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施している補助金制度です。
ものづくり補助金(一般型・2020年公募分)の場合、設備投資に対して、最大1,000万円までの補助金を得られる可能性があります。
2020年に実施されたものづくり補助金の場合、一般型で最大1,000万円、補助率2分の1(従業員数5名以内の小規模事業者であれば、3分の2)で補助金を得られる可能性があります。
なお、補助率とは、必要投資額のうち、補助金を活用できる割合のことです。
そのため、補助率2分の1、必要投資額5百万円の場合、補助金を得られる最大額は2.5百万円(=5百万円×2分の1)となります。
<ものづくり補助金・一般型・2020年実施分>
補助額(最大) | 1,000万円 |
補助率 |
2分の1 (小規模事業者は3分の2) |
*2020年に実施された「特別枠」は既に終了
CERECシステムなどの先端設備の導入を検討される歯科医院にとって重要な点として、「個人経営の歯科医院」は申請できますが、医療法人は補助金の対象にならないという点があげられます。
これは、ものづくり補助金の公募要領(2020年分を前提)にて定められているもので、残念ながら医療法人である歯科医院などは申請対象から除外されているのです。
そのため、ものづくり補助金の対象となるのは個人事業として歯科医院を経営されている方に限定されます(歯科技工所は株式会社などの法人でも申請可能)。
2020年度のものづくり補助金は1年間を通して、通年で公募が行われています。既に1次~4次までの申請は締め切られていますが、2021年2月を予定として5次締め切りの公募が行われる予定です。
しかし、ものづくり補助金の申請のために事業計画書を作成する場合、相応の時間が必要です。
申請を決めて、数日で手続きが完了するというものではありません。
早めに申請するかどうかを検討のうえ、事業計画書の作成などの準備を行うことが大切になります。
ここでは実際にものづくり補助金を活用してセレックシステムを導入した歯科医院の事例をご紹介します。
今回ご紹介するセレックシステムの導入例は、「ものづくり補助事業関連サイト」という政府が公表しているサイトで紹介されているものです。守秘義務などに影響しない、既に公表された情報をもとにご紹介します。
1件目の事例は「審美補綴治療サービス」の提供に取り組む事例です。
一般歯科、歯周治療だけでなく、審美歯科に注力している歯科医院がセレックシステムを導入し、ものづくり補助金を活用した事例になります。
従来の審美歯科治療では、歯を大きく削ってクラウンやブリッジという補綴物を被せて治療するのが一般的でしたが、歯を削ることで、その下にある神経が表面に近づくことにもなっていました。
結果、過敏になったり、歯がしみる、痛みが出るといった原因にもなることが多く、いかに歯を削らずに補綴治療を行うかが、A歯科医院における審美補綴治療での最重要な課題となっていました。
ものづくり補助金を活用してセレックシステムを導入し、ジルコニアなどのオールセラミック素材を用いて、頑丈さと審美性を備えた、厚さ0.5ミリ以下という超極薄型補綴物の試作開発に取り組むことにしました。成功すれば、歯を0.5ミリ以上削ることなく、補綴物を美しく装着できる見込みです。歯を削る量を少なくできるため、痛みなどの発生を抑えることができます。
一般歯科、歯周治療だけでなく、審美歯科に注力している歯科医院がセレックシステムを導入し、ものづくり補助金を活用する事例です。
解決方法
本歯科医院では、ものづくり補助金を活用して3D-CAD/CAM(3Dの光造形技術)の機械「セレックシステム」を導入し、インプラント治療のほか、新素材のジルコニアでの補綴物(詰め物)の院内制作を行うことで、前述の課題解決に取り組むこととしました。
「セレック MC XL プレミアム」を導入し、ガイドを模型で起こして精度の狂いを確認。メーカーによる講習会を受け、セレックの基本的な操作方法や、インレー、クラウン、ブリッジなどの補綴物の製造方法に関する講義を受講。
何度も施作を繰り返し、精度向上に取り組んだ結果、ガイドの院内制作が可能となり、即日でのインプラント治療を提供できるようになりました。そして、インプラントの治療時間は2週間以上短縮、また、ガイドの外注費用を削減できたことで、患者の治療費も見直し、2割低下しました。
前項でご紹介したように、CERECシステムなどの歯科用CADCAMや3Dスキャナをものづくり補助金で購入することは可能です。
しかし、ものづくり補助金は申請すれば誰でも必ず受けられるものではありません。審査を経て、選ばれた事業者のみが受け取ることのできる補助金です。審査に落ちれば受け取ることはできません。
ものづくり補助金を受け取ることのできる割合(採択率=採択数÷申請者数)はどれくらいでしょうか?
これは年度ごと、申請のタイミングで前後しますが、平均的に見て40%程度であることが判明しています。つまり、10人が申請して、うち4人が採択される計算です。
但し、ものづくり補助金への申請は単に確立で考える問題というものでもありません。採択されるための基準がありますので、基準を満たす申請であれば採択率はもっと高くなります。
それでは、ものづくり補助金へ申請して採択されるためにはどうすれば良いのでしょうか。
答えを言えば、審査規準に沿った事業計画書を作成することが大切です。
ものづくり補助金の審査では、申請者から提出される事業計画書をもとに、事業計画の内容にもとづいて採点が行われます。そして、点数が高いものから優先的に採択されていきます。
そして、高得点を獲得し、採択される事業計画書は以下のような要素で判定されます。
これらの内容を「事業計画書」に盛り込み、審査員から納得を得る必要があります。
歯科医院のものづくり補助金への申請はアステップ・コンサルティングにご相談ください。
アステップ・コンサルティングでは、ものづくり補助金はもちろん、様々な補助金に対する申請をサポートしてきた実績が豊富にあります。
経営コンサルティング事業をメインとするアステップ・コンサルティングでは、様々な事業者様の経営計画・事業計画の策定をサポートしてきましたので、補助金申請に適した事業計画の作成にも対応いたします。
また、アステップ・コンサルティングでは歯科医院・病院などの医療業向け経営コンサルティングにも注力しているため、歯科医院向けの専門的なサポートにも取り組んでいます。
今回は、ものづくり補助金を活用して歯科医院がCERECシステムを導入した事例や、ものづくり補助金で採択されるための申請方法などを説明いたしました。
ものづくり補助金は最大1,000万円の補助金を得られる可能性のある制度です。また、医療業では申請の対象とならない補助金制度が多いなか、個人開業なら歯科医院でも申請できる貴重な補助金となっています。
是非、最新設備の導入に活用されてみてはいかがでしょうか。
2020年に実施された「ものづくり補助金」において、実際に採択された歯科医院の申請事例です。
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