中小企業庁では、中小企業に対する様々な支援を行っています。
そのための1つの施策として、「経営革新計画」の認定支援があります。
経営革新計画の認定を受けると、「低利での融資」を受けやすくなったり、ものづくり補助金のように審査の加点を得られる補助金・助成金というものもあります。
つまり、経営革新計画の認定を受けられる事業者は、公的にたくさんの支援を受けられるようになっているのです。
今回は経営革新計画の認定を受けるメリットと、実際に認定を受けるために行うべき準備、申請について説明したいと思います。
Contents
平成28年7月に「中小企業の新たな事業活動の促進に関する法律(中小企業新事業活動促進法)」を改正する「中小企業等経営強化法」が施行されました。
「中小企業等経営強化法」は、「新たな事業活動(創業・経営革新・新連携)」に加えて、「本業の成長」を支援し、中小企業の生産性向上を図るための法律です。
この法律が対象とするもののうち、「経営革新」とは「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義しています。特に、以下のような特徴があります。
①全業種の経営革新を支援(業種で制約条件を設けない)
②単独の企業だけでなく、企業グループや組合などの経営革新計画も可能
③数値目標を含んだ経営革新計画の作成が要件
④都道府県などが承認企業に対して、経営革新計画の開始から1年目以後、2年目以前に、進捗状況の調査を行うとともに、必要な指導・助言を行います。
「経営革新計画」で定義される「新事業活動」とは、以下の4つの取組を指します。
<新事業活動の4つの取組>
①新商品の開発又は生産
②新役務の開発または提供
③商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動
つまり、新しい商品やサービスを作るか、(商品やサービス自体は新しくなくても)新しい生産・販売方式を導入するか、新しい提供方式を導入することで対象となります。
必ずしも「新製品」・「新サービス」が必要ないことがポイントです。生産・販売方法や、消費者への提供方法を工夫することも対象となります。
「経営革新」とは、「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」と定義しています。このうち、「経営の相当程度の向上」についての基準を確認しましょう。
基準は以下の2つの指標で測られます。
①「付加価値額」または「1人あたりの付加価値額」の伸び率
②「経常利益」の伸び率
目標値は以下となります。
計画終了時 | 「付加価値額」又は「1人あたりの付加価値額」の伸び率 | 「経常利益」の伸び率 |
3年計画の場合 | 9%以上 | 3%以上 |
4年計画の場合 | 12%以上 | 4%以上 |
5年計画の場合 | 15%以上 | 5%以上 |
*付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費
*経常利益=営業利益―営業外費用(支払利息・新株発行費など)
営業外収益を含まないことにご注意下さい。
最初に、経営革新計画の認定が得られた時に受けられるメリットからご紹介しておきましょう。こちらでご紹介するメリットに興味があれば、以降の経営革新計画の詳細についてもご確認下さい。
<経営革新計画のメリット>
以降では、上記のメリットについて、それぞれ詳細に解説していきます。
経営革新計画の認定を受けると、中小企業や個人事業主/自営業者の資金調達にとって重要な以下4つの融資で特典を受けられるようになります。
①信用保証協会の保証付き融資
経営革新計画の承認を受けると、通常の融資枠に加えて、「別枠」の融資枠を設定してもらえます。つまり、保証協会を利用して借入できる金額が増加します。
<保証付き融資の借入可能額>
限度額 | 通常 | 別枠 |
普通保証 | 2億円(組合は4億円) | 2億円(組合は4億円) |
無担保保証 (うち特別小口) |
8,000万円 (うち1,250万円) |
8,000万円 (うち1,250万円) |
上記表の通り、経営革新計画の承認を受けられると、信用保証協会の保証付融資の利用可能枠は倍になります。
無担保保証についても通常の8,000万円から、1億6,000万円まで増枠して利用できることになります。
中小企業/個人事業主にとって、信用保証協会を活用した資金調達は重要です。保証枠が拡大すれば、事業の安定性・安全性を高めることができます。
それに加えて、「新事業開拓保証の限度額」が引き上げられます。経営革新のための事業を行うにあたって、必要な資金のうち、新事業開拓保証の対象となるもの(研究開発費用など)の付保限度額が引き上げられます。
<新事業開拓保証の限度額>
限度額 | 通常 | 経営革新認定承認者 |
一般 | 2億円 | 3億円 |
組合 | 4億円 | 6億円 |
②日本政策金融公庫の特別利率適用
経営革新計画の承認が得られると、日本政策金融公庫から融資(設備資金・運転資金)を受ける場合に、優遇金利による借入が可能となります。
<中小企業事業>
新事業育成資金 | 新事業活動促進資金 | |
貸付限度額 | 6億円 | 設備資金 7億2千万円 (うち運転資金2億5千万円) |
貸付利率 | 基準利率▲0.9% | 基準利率▲0.65% |
<国民生活事業>
新事業活動促進資金 | |
貸付限度額 | 設備資金 7千2百万円 (うち運転資金 4千8百万円) |
貸付利率 | 基準利率▲0.65% |
③高度化融資制度の活用
高度化事業とは、中小企業者が「共同」で工場団地を建設したり、商店街にアーケードを設置する事業などに対し、都道府県と独立行政法人中小企業基盤整備機構の診断・助言を受けたうえで、長期・低利で融資が受けられる制度です。
④食品流通構造改善促進機構による債務保証
食品製造業者等は、経営革新計画の実行にあたり、金融機関から融資を受ける際に、食品流通構造改善促進機構による債務保証を受けられます。
経営革新計画の認定を受けたいと思う企業の多くはこの補助金・助成金の申請を目的としています。補助金・助成金の詳細は各都道府県などによって異なりますが、都道府県によっては、「経営革新承認企業」に対して、直接補助する制度を有するところもあります。
さらに、国が実施する補助金事業の中には、「経営革新計画」承認企業に対して審査で加点してもらえるものもあります。
特に、経営革新計画の認定が好材料となる補助金の例として「ものづくり補助金」があります。
ものづくり補助金は最大補助額が1,000万円(平成31年実績)にもなり、中小企業・小規模事業者が利用できる補助金として非常に人気のあるものとなっています。
これから、ものづくり補助金の申請を検討している事業者には、是非とも経営革新計画の申請を検討していただきたいものとなっています。
経営革新計画の承認が得られると、「販路開拓」に関する具体的な支援を受けることが可能です。
中小企業者から希望が多い、「販路開拓」支援ですので、需要は相当に高いものと言えます。販路開拓では「資金」的な支援だけでなく、人材・ノウハウなどの専門家の支援を得ることもできます。
販路開拓コーディネーター事業
首都圏・近畿圏といった大規模市場をターゲットとした経営革新計画承認企業の販路開拓を促進するために、中小企業基盤整備機構に商社・メーカーなどのOBを販路開拓コーディネーターとして配置しています。新商品・新サービスを持つ企業のマーケティングを企画から首都圏・近畿圏を舞台に想定市場の企業へのテストマーケティング活動まで支援しています。
ポイント
販路開拓支援活動の実施に要する費用についても補助の対象となります。
(一部企業負担もあります)
新価値創造展(中小企業総合展)
新価値創造展とは、中小企業・ベンチャー企業が自ら開発した優れた製品・技術・サービスを展示・紹介することにより、販路開拓・業務提携などの企業間取引を実現するビジネスマッチングの機会を提供するイベントです。
経営革新計画の承認を得ると、中小企業が海外展開する際に以下のような優遇が受けられます。
<海外展開の優遇措置>
①スタンバイ・クレジット制度
中小企業者の外国関係法人等が現地(海外)の金融機関から期間1年以上の長期資金を借入する前に、日本政策金融公庫が信用状を発行し、その債務を保証してくれる制度になります。
中小企業が海外金融機関から資金調達するのは容易ではありませんが、こちらの支援によって可能性が高まります。
経営革新計画を認定を得られることで、中小企業が、外国関係法人などによる海外での現地通貨の円滑に調達できるように支援してもらうことができます。
②中小企業信用保険法の特例
中小企業者が国内の金融機関から海外直接投資事業に要する資金の融資を受ける場合に、承認を得た経営革新計画に従って海外において事業を行う中小企業者及び、組合などについては、海外投資関係の限度額を引き上げてもらうことができます。
<投資関係保証限度額>
通常 | 経営革新計画承認後 | |
1企業 | 2億円 | 3億円 |
1組合 | 4億円 | 6億円 |
③日本貿易保険(NEXI)による支援措置
中小企業者の外国関係法人等が、現地(海外)の金融機関から借入を行う際に、地銀等の保証に加え、独立行政法人日本貿易保険(NEXI)が、海外事業資金貸付保険を付保する制度です。本制度により、外国関係法人などによる海外での現地通貨の円滑な調達を支援してもらえます。
経営革新計画の承認を得た企業は、「特許関係料金減免制度」を受けられます。「特許関係料金減免制度」を活用すると、経営革新計画の技術に関する研究開発について、特許関係料金が半額に軽減されます。
対象となる特許関係料金
・審査請求料
・特許料(第1年~第10年分)
経営革新計画のメリットを考える場合、ついつい補助金の評価項目となることや、融資を受けやすくなるといったメリットに目を向けがちです。
しかし、経営革新計画の認定を受けることには、もっと大きなメリットや効果があります。
それは、企業の事業継続力を高め、発展に活かすことができることです。
企業経営において、中長期的な経営計画を作成し、達成に向けて計画を実行していくことは非常に重要です。数年先を見据えて、会社のあるべき姿を経営者が考え、そのために実施すべき施策などを考え、実行していくこと自体が、経営革新計画の大きな効果となります。
実際に経営革新計画の承認を得るための手続きの流れを確認しておきましょう。
<手続き方法>
①都道府県担当部局へ問合せ
▼
②必要書類の作成・準備
▼
③申請書の提出
▼
④都道府県知事・国の地方機関などの承認
特に重要なのは②の必要書類の作成・準備となります。実際に経営革新計画を作成する必要があります。@コンサルティング・パートナーズでは、経営革新計画書の承認を得るための計画策定をサポートさせていただきます。
経営革新計画の承認を得るのは、「中小企業」および「個人(自営業者など)」となります。資本金の額、及び従業員基準の「いずれか」を満たす必要があります。
<対象となる基準>
主たる業種 | 資本金基準 (資本金額又は出資額) |
従業員基準 (常時使用する従業員数) |
製造業、建設業、運輸業その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
サービス業 | 5千万円以下 | 100人以下 |
但し、ソフトウェア・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
但し、旅館業 | 5千万円以下 | 200人以下 |
小売業 | 5千万円以下 | 50人以下 |
*組合なども対象となります。詳細はお気軽にご相談下さい。
経営革新計画の承認を得るためには、以下のような書類を準備する必要があります。
No | 必要書類 |
1 | 経営革新計画に係る承認申請書および別表 |
2 | 上記の写し |
3 | 定款 |
4 | 直近2年間の事業報告書・貸借対照表・損益計算書 |
審査で特に重要となるのは、1の「経営革新計画に係る承認申請書」となります。
承認申請書をしっかりと作成することが経営革新計画の承認を得るためのポイントとなります。
しかし、経営計画の作成になれていない事業者にとって、単独で作成することは容易ではありません。
また、公的に用意された相談機関は、時間の制約や、人的資源から、必ずしも十分な支援が期待できません。
経営革新計画の申請にあたっては、是非とも当社にご相談下さい。
ご相談/お申込みはこちらから
経営革新計画の認定を得るために最も大切なポイントは事業計画の作成です。
事業計画を作成するにおいては以下の3つのポイントを重要です。
①企業/自営業の状況や、市場をしっかりと把握する
②実現可能な経営計画を作成する
③合理的な根拠のある計画を作成する
計画を作成する際には、現状をしっかりと分析することから始まります。
自社/事業の状況はもちろん、顧客などの外部環境の分析も必要です。
環境分析や自社の状況が把握できれば、次に、経営計画を作成します。現状と、目標とする姿のギャップを如何に埋めていくかを考えます。その際に重要なことは、「実際に実現できる」計画を作成することです。実現可能性のない、机上だけの計画では意味がありません。
計画を作成するには、専門家による支援も大切です。これから経営革新計画を認定を目指す方は、是非、当社にご相談下さい。
経営革新計画の認定を受けることで得られるメリットがたくさんあります。
融資を受ける際の優遇に加え、公的な補助金を得られやすくなるというメリットもあります。
また、経営革新計画を目標として、経営計画をしっかりと作成することは事業/企業を強くすることにつながります。
企業自体が利益を生み出しやすくなる状況になれば、補助金・助成金を得られる以上に大きなメリットになるでしょう。
関連記事
03-5859-5878受付10:00~18:00