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ものづくり補助金の対象となる「革新的サービス」とは?/「ものづくり技術」以外も補助金を受けられる

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2022.06.05
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アステップコンサルティング
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  • 2022
  • 05
  • Jun
ものづくり補助金の特徴と変更点

ものづくり補助金は、その名称から、「製造業だけを対象とする補助金」という印象を持っておられる方も多いでしょう。

 

しかし、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と言い、製造業以外も対象としている補助金です。  

 

「ものづくり補助金」が対象とする事業の類型(カテゴリー)は2つです。

①ものづくり技術

②革新的サービス

 

決して製造業のものづくり技術だけでなく、「革新的サービス」を行う事業者もものづくり補助金を受けることができます。

 

しかし、「革新的サービス」と聞き、対象となる「革新的サービス」がどういったものかに迷われる方も多いでしょう。  

今回は「革新的サービス」「経営革新」の意味や、申請対象となる事業者の範囲について説明しましょう。    

 

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Contents

「革新的サービス」の定義

ものづくり補助金を検討するにあたって、最初に留意しておきたいことが1点あります。

 

それはものづくり補助金の審査は、一定の審査基準にもとづいて採点されるということです。  

ものづくり補助金は毎年、数万件もの応募が殺到する人気の補助金です。

 

それだけ多数の応募申請を1人の審査官が1ヶ月で全て審査するということは当然できません。複数の審査官が分担して審査を行います。

 

ものづくり補助金も国の事業の1つですから、どんな人が採点者になっても公平に審査を行うことができるように審査基準が設けられており、採点は事前に定められた審査基準にそって行われます。  

 

そのため、ものづくり補助金に応募するにあたり、審査基準を理解しておくことが重要なポイントになります。  

 

それでは、今回のテーマである「革新的サービス」としても認められるための審査基準・採点基準とはどういったものでしょうか。

この答えは、ものづくり補助金の公募要領に以下の通り記載されています。

 

【革新的サービス】

 「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」で示された方法で行う革新的なサービスの創出・サービス提供プロセスの改善

引用:ものづくり補助金の公募要領

 

ものづくり補助金の公募要領には上記のように記載されています。  

革新的サービスの定義から解る通り、革新的サービスを理解するうえでは「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」が重要な手がかりとなります。  

 

ものづくり技術のカテゴリーで補助金を申請する際には「中小ものづくり高度化法」を手元において作業されるかと思いますが、革新的サービスのカテゴリーで申請する際に手元に置くべき書類は「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」です。

 

それでは、中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドラインとはどういったものでしょうか。  

革新的サービスとはどういったものか?  

生産性向上のためのガイドライン

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」とは、経済産業省が平成27年に1月に策定した文書です。

 

サービス業の9割以上を占める中小企業が、自社の経営課題を解決する際の参考にして頂くことがガイドラインの目的です。  

 

この「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」(以下「生産性向上のためのガイドライン」)が、2つ目のカテゴリー「革新的サービス」の基準となります。そして、生産性向上のためのガイドラインでは、以下の10項目のなかから生産性向上を図ることを指針としています。

 

(1)新規顧客層への展開
(2)商圏の拡大
(3)独自性・独創性の発揮
(4)ブランド力の強化
(5)顧客満足度の向上
(6)価値や品質の見える化
(7)機能分化・連携
(8)IT 利活用<付加価値向上に繋がる利活用>
(9)サービス提供プロセスの改善
(10)IT 利活用<効率化に繋げるための利活用>

*生産性向上のためのガイドラインから抜粋

 

生産性向上のためのガイドラインは10項目を全てを満たす必要はなく、いずれかの項目によって、中小企業の生産性を向上させる取り組みを行うことが出来れば良いことになっています。

 

10項目のうち、それぞれの事業者がご自身にあった取り組みを選択して実践していることを、ものづくり補助金の審査にも解るようにしておくことが大切です。

 

そのため、補助金の申請書を作成するにあたっては、以下のガイドラインの骨子を意識した流れで申請書を作成する必要があります。

 

①当社の経営課題はAです。

②Aを克服するため、当社が持っている強みであるBを活かしたプロジェクトCを実施。そのために導入すべき設備はDです。

③プロジェクトCは、ガイドライン記載の労働生産性向上のアプローチのうち、「(1)新規顧客層への展開」に合致します。

④以上より、プロジェクトCの一部である設備Dは、本補助事業にて取り組むべき(=補助金で購入すべき)ものに該当します。

 

以上の4つの流れが「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」に準拠したロジックの流れです。

この流れにしたがって申請書の説明を展開していくことが基本となります。    

 

「革新的サービス」を主張するロジック

「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」を読み込んで、自社が購入したい設備は、ものづくり補助金が意図する「革新的サービスと合致するプロジェクトの一部だ」、と主張するためのロジックの作り方を掴んでいきましょう。

 

そのために、生産性向上のためのガイドラインが目的とする「生産性向上」がどういったものを指すのかを理解しておく必要があります。  

 

生産性向上のためのガイドラインには、「生産性向上」とは何なのかという疑問についての答えが以下のように書いてあります。

 

(1)人口減少社会の下では、従業員1人あたり(もしくは時間あたり)の生産性を上げることが必要です。このことを、「労働生産性の向上」といいます。

(2)労働生産性を向上するためのアプローチ方法は2通りあります。

 

①付加価値の向上=「売上げアップ」という意味です。

※売上アップの方法は、8つ。複数該当してOKです。

(新規顧客層への展開、商圏の拡大、独自性・独創性の発揮、ブランド力の強化、顧客満足度の向上、価値や品質の見える化、機能分化・連携、IT利活用)

 

②効率の向上=「コスト削減」という意味です。

※コスト削減の方法は、2つ(サービス提供プロセスの改善、IT利活用)

 

大切なのはプロジェクトの内容です。

ものづくり補助金に応募できる「革新的サービス」とは、「プロジェクトの内容が、ガイドラインに書いてある労働生産性の改善方法(付加価値の向上か、効率の向上のどちらか)と一致している」サービスです。    

 

「革新的サービス」の例

生産性向上のためのガイドラインで紹介されている革新的サービスの例をいくつか紹介します。  

 

手芸用店舗(小売業)の採択事例

◆新規プロジェクトの概要: 主なターゲット層であるミシンのヘビーユーザー層が減少する中、「自宅にミシンを持っていないがハンドメイドに興味がある」層を開拓するために(=新規顧客層への展開)、店舗内に「ミシンカフェ」スペースを新規開設。

 

ハンドメイドを手軽に体感できる機会を提供します(=顧客満足度の向上)。  

 

≪ポイント≫

見て頂いた通り、上記の採択された事例は「ものづくり技術」としての製造業の例ではないことが解るでしょう。

 

ものづくり補助金が製造業だけのものでないことを明確に示している事例と言って良いでしょう。  

上記の例は、労働生産性の向上のアプローチとして「付加価値の向上」を選択し、その具体的方法として「新規顧客層への展開」「顧客満足度の向上」の2つを取り入れたプロジェクトを立ち上げた例です。

 

実際に何を購入されたのかはガイドラインに記載はなく推測となりますが、たとえば新規にミシンを導入する必要があればミシン購入費が補助金の対象となる可能性があります。  

 

こちらの事例は生産性向上のためのガイドラインの意図にそった革新的サービスのプロジェクトなので採択されています。  

ものづくり補助金の採択事例(革新的サービス)

 

運輸業の革新的サービスの事例

◆新規プロジェクトの概要: 異なる荷主が同一の配送先への配送を共同で行う共同配送において時間指定ニーズなどの細かな要望が増加しています。

 

これに対応するため、荷物の入出荷管理や在庫の管理を行うことができる倉庫管理システムを導入(=IT利活用)し、トータルロジスティクスを構築・提供(=顧客満足度の向上)します。  

 

≪ポイント≫

こちらも製造業が取り組む「ものづくり技術」とは無縁の採択事例です。  

 

上記の例は、労働生産性の向上のアプローチとして「効率の向上」を選択し、その具体的方法として「IT利活用」「顧客満足度の向上」の2つを取り入れたプロジェクトを立ち上げた例です。設備投資の一部を支援するのがものづくり補助金ですので、この例では、倉庫管理システムの導入費用が補助金の対象となったものと推測されます。  

 

こちらも生産性向上のガイドラインの意図にそったプロジェクトであり、革新的サービスとして採択されています。  

 

以上、ガイドラインより例を2つ掲載しました。

決して、ものづくり補助金が、製造業が取り組む「ものづくり技術」だけのものではないことがお解りいただけたと思います。  

また、生産性向上のガイドラインの趣旨に沿った取り組みであることもご理解いただけたことと思います。    

 

革新性が認められる水準

次に、ものづくり補助金に申請するため、革新的サービスの開発に取り組むにあたって、補助金の申請要件として求められる「革新性」の程度が気になる経営者は多いことでしょう。

 

実際、この革新性についてのご質問、ご相談を受けることが多々あります。  

 

例えば、全く世にないサービスを生み出す取り組みでないと補助金に申請できないのであれば、要件を充足できる経営者も相当に限られてしまうことでしょう。

ここでは、ものづくり補助金が求める革新性の程度、水準について解説したいと思います。  

 

一般的でない新サービス

ものづくり補助金の申請対象となる革新的サービスは、現状、「自社になく、他社でも一般的ではない新サービスや新商品、もしくは新生産方式」と考えれば良いでしょう。  

 

ものづくり補助金でも加点項目として認められており、また、政府が中小企業の経営強化の施策として重要視しているものに、「経営革新計画」というものがあります。  

 

 経営革新計画とは?経営革新計画を利用するメリット  

 

経営革新計画の認定を受けられれば、ものづくり補助金の審査でも有利になります。

この経営革新計画で求められる革新性は、ものづくり補助金における革新的サービスと非常に関連性が強いと考えられます。

 

そして、経営革新計画において革新性(新たな取り組み)とは以下のように明記されています。  

 

「新たな取り組み」とは、多様なものが存在しますが、個々の中小企業者にとって「新たなもの」であれば、既に他社において採用されている技術・方式を活用する場合についても承認対象です。  

 

ただし、業種ごとに同業の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)における当該技術の導入状況を判断し、それぞれについて既に相当程度普及している技術・方式等の導入については承認対象外です。  

 

つまり、同業他社において既に普及している一般的なものでなく、まだ申請対象会社内で取り組んでいるものでなければ、新たな取り組み(革新的サービス)として認められる可能性が高いのです。

 

また、他業界で一般的なサービス、技術であっても、自社が所属する業界で一般的でないものであれば、革新的サービスとして認められることになります。  

 

なお、革新的サービスとは、直接顧客に提供されるサービス、商品だけでなく、その提供の方式などの革新性も対象となります。(以下ご参照)

 

▼新たな取り組みの例

・新商品の開発又は生産
・新役務の開発又は提供
・商品の新たな生産又は販売の方式の導入
・役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動

 

同業他社の範囲は?

なお、前述の同業他社として取り扱うべき範囲ですが、これはご自身が実際に競合する可能性のある同業他社と考えれば良いでしょう。  

 

つまり、地域性の強い事業の場合、商圏が重複して、直接競合関係にある同業他社が対象となります。

 

一方、同じ業種・業界であっても、商圏が異なり、直接競合関係にない他社は対象外と考えて良いでしょう。  

これは、際にご自身が競合する同業他社の単なる模倣であれば、「革新的サービス」とは言えないものであり、ものづくり補助金の趣旨にも反するためです。  

 

市場は存在するか?

革新的サービスでものづくり補助金に申請する場合、市場が存在する(需要が十分にある)ことを確認しておく必要があります。 

 

ものづくり補助金の申請においては、一定程度の付加価値の向上が期待できる事業計画が求められます。

単に、革新的サービスであるというだけでは要件を満たすことができません。

 

もちろん、この事業計画には実現可能性が高いことが求められます。  

 

新しい商品、新しいサービスの場合、取り組んだ結果、「本当に売れる見込みがあるのか?」は重要な課題になります。

 

そのため、事前に需要が見込まれることを十分に確認しておく必要があります。  

同業他社で一般的でないものは革新的サービスとして認められる可能性がある  

 

ものづくり補助金は赤字だと難しい?

ものづくり補助金への申請をご相談される経営者の方から、「赤字だと申請はできない?」「赤字企業は採択されないのではないか?」と質問を受けることがあります。  

 

ものづくり補助金は、中小企業の設備投資を支援するための補助金です。

黒字企業でなければ採択されない補助金ではありません。  

 

過去の実例では、 ☑直前期の経常利益が赤字で採択 ☑前々期が経常利益は黒字・税引前登記純損失(赤字)、当期は共に黒字で採択 などの例があります。  

直近の決算が赤字であることだけが原因で足切りされることは無いと思って良いでしょう。

 

アステップにご相談ください

ものづくり補助金は中小企業、小規模事業者に人気の補助金であるため、かなり競争が厳しい補助金となっています。

 

また、近年は申請される事業者それぞれが厳しい競争に勝つため、綿密な準備を行って申請されるようになっています。  

 

そのため、採択されるためには、補助金申請に慣れていない経営者や、担当者が単独で準備されることは得策ではありません。

必要以上に時間がかかってしまって、非効率であることに加え、審査で評価されるためのポイントを押さえた申請書作りも難しくなってしまいます。  

 

アステップ・コンサルティングは申請書類の作成代行だけでなく、革新的サービスの取り組みや、事業計画づくり、市場調査などの各種アドバイスも行っています。  

 

ものづくり補助金の申請をご希望されているなら、アステップ・コンサルティングにご相談ください。  

 

 

まとめ

ものづくり補助金は製造業が取り組み「ものづくり技術」だけが対象であると誤解している方がいます。

 

しかし、ものづくり補助金は「革新的サービス」に取り組むための設備投資も対象となる補助金です。

そのため、製造業だけでなく、ほぼ全ての業種の方が申請対象となります。

 

また、求められる「革新性」は決してハードルの高いものではなく、比較的取り組みやすい水準であると言って良いでしょう。  

 

ものづくり補助金は最大で1,000万円もの補助金が受けられる貴重な制度です。

新たな商品、サービスに取り組みたいと考える経営者を支援してくれる制度ですので、是非、積極的に活用するようにしましょう。  

 

 

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